ユーカリが丘や志津を移住先の候補に入れていた方は、2026年8月の豪雨で手が止まったのではないでしょうか。「台地の上だから水害に強い」と聞いていたのに、SNSには水没した車の写真が流れてくる。結局このエリアは大丈夫なのか、判断がつかない。

先に結論を書きます。ユーカリが丘・志津は確かに台地の上ですが、「町名や駅名で安心」という判断は成立しません。同じ町丁の中に高台と坂下の谷が混ざっていて、数百メートル離れただけで結果が真逆に分かれるからです。

私は宅建士(2014年取得)で、不動産営業を5年やったあと、この志津エリアの台地の上に自宅を買いました。買う前に自分で標高と浸水想定を調べ、水が出ないエリアに絞ってから物件を見に行っています。8月13日の夜、自宅と同じ高さの区画は無事でしたが、すぐ近くの坂の下は広範囲に水没していました。

この記事では、坂の上と下で何が分かれたのか、なぜ台地の街で水が出るのかを、佐倉市の公式資料と実際の降雨量で説明します。読み終えるころには、候補地が出てきた時点で、自分でリスクを判定できるようになります。営業に言われる前に候補から外せるようになり、火災保険を選ぶときの判断も一段ラクになります。

はじめに 令和8年8月千葉豪雨では、佐倉市を含む県内各地で人的被害が出ています。この記事は被害を話題にするためのものではなく、これから住まいを選ぶ人が同じ状況を避けるために書いています。

ユーカリが丘・志津は台地の上。それでも町名では判断できない

ユーカリが丘や志津のハザードマップを調べると、洪水の浸水想定区域からは外れているという情報にたどり着きます。これは事実です。ただし「だからこの町名なら安心」とは言えません。

理由は地形にあります。佐倉市が公開している「地区別防災カルテ」の志津地区版によれば、志津地区は北部の印旛沼干拓地や河川沿いに低地が延びるほかは、緩やかな斜面の台地上にあるとされています。つまり地区全体としては台地。ここまでは間違いありません。

問題は、その台地が平らな一枚板ではないことです。下総台地は、台地面を細かい侵食谷が刻んでできています。空から見ると平坦に見えても、実際には台地の平坦面と、谷の斜面と、谷底が入り組んでいる。そしてこの谷は、行政の町丁の区切りとはまったく無関係に走っています。

私の自宅は志津エリアの台地の上にありますが、同じ町丁の中に、坂を下りた谷のエリアがあります。歩いて数分の距離です。地図で町名を見ているかぎり、この差は絶対に見えません。

実際に国土地理院の地図で標高を見ると、この一帯の数字はこう分かれます。

場所標高
上志津の高いところ(三角点)25.5m
中志津の高いところ24〜25m
南ユーカリが丘の台地面22m
同じ範囲内の谷底9m台

出典:国土地理院ウェブサイト(地理院地図・標高値はDEM5A)より読み取り。2026年9月時点。

同じ地図の中で、標高差が15m以上あります。ビルなら5階分です。この落差が、駅ひとつ分にも満たない範囲に収まっている。これが下総台地の街の実態です。

だから「ユーカリが丘だから」「志津だから」という単位で安心・危険を判断すると、外します。見るべき単位は町名ではなく、坂です。

エリア全体の住み心地についてはユーカリが丘の移住ガイド志津駅周辺の街レビューにまとめていますが、この記事で扱う水害リスクは、それとは別に見る必要がある項目です。

令和8年8月千葉豪雨で、坂の上と坂の下は真逆に分かれた

2026年8月13日の豪雨で、私の周辺では坂の上と坂の下で結果がはっきり分かれました。

高い区画は、降った雨がそのまま低いほうへ流れていきます。逆に谷は、周囲から集まってきた水の行き場になります。同じ雨量でも、地形によって水の集まり方が違うためです。

実際に自宅と同じ高さにある区画は、周辺も含めて軒並み無事でした。一方、坂を下りた谷のエリアは広範囲に水没しています。私が自分の目で見た範囲でも、一本の通り沿いだけで20台以上の車が水に浸かり、動かなくなって放置されていました。車のドアの高さを超える水位です。

令和8年8月千葉豪雨のあと、志津エリアの坂下で道路脇に取り残された車

水が引いたあとの志津エリアの坂下。道路脇に流された車が、規制のコーンで囲われたまま残されていた。

翌日以降になっても、動かせなくなった車がそのまま路上に残っていました。水没した車はエンジンがかからず、自走できません。レッカーの手配も一斉には進まないため、通り沿いに置かれたままになります。

志津エリアの坂下の通り沿いに並んだまま動かせなくなった車

同じ通り沿い。動かせなくなった車が路肩に並んだままになっていた。

この豪雨は、気象庁が2026年8月14日に「令和8年8月千葉豪雨」と命名しています。千葉県には大雨特別警報と土砂災害特別警報が発表されました。単なる大雨ではなく、名前が付く規模の災害だったということです。

そのうえで強調したいのは、その規模の雨が降っても、坂の上は無事だったという点です。逆に言えば、坂の下は名前が付くレベルの雨で水没する。この差は運ではなく、地形で説明がつきます。

排水能力の2倍が降った。洪水と内水は別物

台地の上の街で水が出るとき、原因はたいてい「洪水」ではなく「内水」です。この2つは別物で、見るべき資料も違います。

種類何が起きるか台地の街での起きやすさ
洪水
(外水氾濫)
川の堤防から水があふれる、または堤防が壊れて周囲が浸水する河川から離れた台地の上では起きにくい
内水氾濫川があふれなくても、降った雨を下水道や排水路が処理しきれずにあふれる台地の上でも起きる。谷地形では特に起きやすい

佐倉市は、1時間あたり50ミリの降雨に対応できる下水道施設の整備を進めていますが、近年はそれを上回る大雨による浸水被害が発生している、と市自身が説明しています(佐倉市公式・内水浸水想定区域の解説)。

では、8月13日に実際に降ったのはどれくらいだったのか。

佐倉市の排水想定と、2026年8月13日の実際の降雨
下水道が対応を想定している雨量
1時間 50ミリ
実際に降った雨量(2026年8月13日 18時50分までの1時間)
1時間 約110ミリ
佐倉市付近では18時50分までの1時間に約110ミリの猛烈な雨が降ったとみられ、気象防災速報(記録的短時間大雨)が発表されました。24時間雨量は254.5ミリ(8月14日午前4時現在)。
出典: 佐倉市公式サイト/日本気象協会 tenki.jp(気象庁発表に基づく)

街の排水能力のおよそ2倍が、1時間で降った。これが、河川から離れた台地の上の街で水があふれた理由です。川があふれたわけではありません。降った雨が抜けきらず、低いところに溜まった。

さらに佐倉市は、市内の道路冠水の多くが、落ち葉やゴミによって側溝や集水桝の雨水集水口が塞がれることで発生していると注意を呼びかけています。谷地形に加えて、排水口が詰まっていれば、水はさらに逃げ場を失います。

水が引いたあと、本来車が停まらない位置に取り残された車

水が引いたあと。本来なら車が停まるはずのない位置に取り残されていた。水がどれだけの勢いで低いほうへ集まったかがわかる。

つまり内水氾濫は「川から遠いかどうか」ではなく、「周りより低いかどうか」と「水が抜けるかどうか」で決まります。だから台地の上でも起きるのです。

佐倉市のハザードマップは、想定と実績の3枚で見る

候補地の水害リスクを調べるとき、ハザードマップを1枚見て終わりにしてはいけません。見るべき資料が3種類あり、それぞれ前提が違うからです。

佐倉市の現行版は「佐倉市防災ハザードマップ」(令和4年3月作成)で、以前の洪水ハザードマップと内水ハザードマップが統合されたものです。ただし統合されても、洪水と内水では想定している雨の前提そのものが異なります。

見る資料何が描かれているか前提
洪水(外水)の浸水想定河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域と深さ利根川は72時間総雨量491ミリ(平成29年7月20日指定)、高崎川および印旛沼流域の河川は24時間総雨量668.7ミリ(令和2年5月28日指定)
内水の浸水想定下水道等が処理しきれず浸水する範囲と深さ内水浸水シミュレーションと浸水実績に基づく。洪水(外水)の前提降雨とは異なる
浸水履歴実際に浸水が報告された場所の記録平成18年4月1日以降、住民の通報などに基づき市が把握したもの

ここで一番見落とされるのが3枚目です。佐倉市は危機管理課のページで過去の浸水履歴を一覧のPDFで公開しています。ハザードマップが「これから起きうる想定」なのに対し、浸水履歴は「実際に起きた記録」です。性質がまったく違います。

ただし市も注意書きを添えているとおり、この一覧は住民の通報などに基づいて把握されたもので、実際の浸水被害すべての記録ではありません。また、特定の個人にかかる物件の浸水履歴を示すものでもありません。「載っていない=安全」ではない、という読み方が必要です。

この「1枚見て安心しない」という考え方は、火災保険を選ぶときもまったく同じです。水災補償があるかないかの○×だけを見て決めると失敗します。詳しくは大雨で火災保険はどこまで出るか|水災補償が必要か決める4手順にまとめました。

プロは重要事項説明を待たない

ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。水害リスクを重要事項説明で知ろうとしてはいけません。遅すぎます。

制度としては整っています。令和2年(2020年)8月28日に施行された宅地建物取引業法施行規則の改正により、不動産取引の重要事項説明で、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を示すことが義務化されました(2026年9月時点)。

ただし、この義務には2つの限界があります。

  • 義務の範囲はハザードマップ上の位置を示すことであり、マップに記載された内容そのものを説明するところまでは義務付けられていない
  • 重要事項説明は契約の直前に行われる。その時点で買主は、もうその物件を気に入ってしまっている

正直に書くと、私は自分が家を買ったときの重要事項説明で、水害についてどう説明されたかを覚えていません。説明義務があるので受けているはずですが、記憶に残っていない。

形骸化していたからではありません。先に自分で調べて、水が出ないエリアだと知ったうえでその物件を見に行っていたからです。知っている話をもう一度聞いても、記憶には残りません。

不動産の仕事をしている側からすると、これは特別なことではありません。物件を探す段階で地図を開き、水が出るところは候補から外す。順番として当たり前に組み込まれています。素人は契約直前に初めて知り、業者は探し始めた時点で切っている。この差が、そのまま買う物件の差になります。

実利もあります。浸水が想定されていないエリアに絞り込めていれば、火災保険の水災補償を付けるかどうかという論点を、前提から軽くできます。保険料の設計もシンプルになる。買ったあとのコストにまで効いてくる話です。

この記事の立ち位置 ここまでの内容は一般的な情報提供であり、特定の物件や区域の安全性を保証・否定するものではありません。個別の物件についての判断は、宅地建物取引業者および自治体の最新資料でご確認ください。

内見の前に自分でやる3ステップ

候補地が出てきたら、内見の予約を入れる前にこの3つをやってください。合わせて15分ほどで終わります。

ステップ1: 色別標高図で坂を見る

最初にやるのは、浸水想定を見ることではなく地形を見ることです。国土地理院の地理院地図やハザードマップポータルサイトには、標高を色分けして表示する機能があります。候補地の住所を入れて表示すると、平らに見えていた街の中に谷が走っているのが色ではっきり見えます。

見るポイントは、その地点が周囲より高いか低いかの一点です。周囲より低い色になっている場所は、雨水が集まる方向にあります。

色の区切りは自分で設定できます。この記事の地図では10m以下・10〜15m・15〜20m・20〜25m・25m以上の5段階にしました。デフォルトのままだと関東平野全体が同じ色になって何も見えないので、必ず刻み直してください。台地の街なら5m刻みくらいが目安です。

志津・ユーカリが丘エリアの色別標高図。台地と谷が色で分かれている

志津・ユーカリが丘エリアの色別標高図。台地の中に谷が枝分かれして入り込んでいるのがわかる。出典:国土地理院ウェブサイト(地理院地図)を加工して作成

色別標高図の凡例。10m以下から25m以上までの5段階

色の意味はこうです。濃い青が10m以下、水色が10〜15m、緑が15〜20m、黄が20〜25m、赤が25m以上。赤い面が台地の上、青い帯が谷です。住宅地の中に青と水色が枝のように食い込んでいるのが見えると思います。その帯の上にも、ふつうに家が建っています。

読むときの注意 地理院地図の色別標高図には、データの作成方法の違いにより、水部とその周辺などで不自然な標高差が生じる場合があるという注意書きが添えられています。川沿いの色は実際より低く出ていることがあるため、色は「おおよその高低」を掴むために使い、最終判断は市のハザードマップと現地確認で行ってください。

ステップ2: 洪水・内水・浸水履歴を分けて見る

地形を確認したら、市の資料に移ります。佐倉市であれば防災ハザードマップで洪水と内水を分けて確認し、そのうえで危機管理課が公開している浸水履歴を見ます。

ここで大事なのは「洪水の想定区域外」で安心しないことです。前述のとおり、台地の街で起きるのは主に内水です。洪水の図だけを見て真っ白だったから安全、という読み方が一番危ない。

ステップ3: 現地で坂の下と側溝を見る

最後は現地です。物件そのものより、そこに至るまでの道路の勾配を見てください。物件が坂の途中にある場合、下側にどれだけ低い区間があるかが重要です。道路が冠水すれば、家が無事でも出入りできなくなります。

あわせて、周辺の側溝と集水桝が落ち葉やゴミで詰まっていないかも見ておくと、その地域の排水の状況が見えます。可能であれば雨の日に行くのが理想です。水が実際にどちらへ流れるかがわかります。

  • 01色別標高図で、候補地が周囲より高いか低いかを見る
  • 02洪水・内水・浸水履歴の3つを分けて確認する
  • 03現地で坂の下側と側溝を見る(できれば雨の日に)

まとめ:ユーカリが丘・志津で家を買うなら、町名ではなく坂で見る

この記事の内容を振り返ります。

  • ユーカリが丘・志津は台地の上だが、台地は平らな一枚板ではなく、谷が細かく入り込んでいる
  • そのため同じ町丁の中でも、坂の上と坂の下で結果が真逆に分かれる
  • 令和8年8月千葉豪雨では、佐倉市付近で1時間に約110ミリ。市の下水道が想定する1時間50ミリのおよそ2倍が降った
  • 台地の街で起きるのは主に内水氾濫。洪水の想定区域外でも起きる
  • 見るべき資料は、洪水の想定・内水の想定・浸水履歴の3つ
  • 重要事項説明は契約直前。プロは物件を探す段階で地図を見て、水が出るところを候補から外している

水害リスクは、一度買ってしまうと後から動かせない条件です。逆に言えば、買う前の15分で、ほぼ避けられる条件でもあります。色別標高図を開いて坂を確かめる。それだけで、候補地の見え方が変わります。

ここまでできれば、あとは資金の話です。エリアを絞り込んだあとに多くの人がつまずくのが、住宅ローンをどこで借りるかという判断でした。金利の数字だけで選ぶと、審査や諸費用のところで結局損をします。住宅ローンはどこで借りる?借入先5タイプと審査に落ちない準備で、自分の借入経験も含めて比較しています。エリア選びと並行して読んでおくと、動き出しが早くなります。

📎 参考・出典
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・税務的・投資的アドバイスではありません。記載内容は2026年9月時点の情報です。ハザードマップおよび浸水想定区域は今後変更される場合があります。また、浸水想定区域に該当しないことをもって水害のリスクがないことを意味するものではありません。実際のご判断にあたっては、宅地建物取引業者・自治体の最新資料等をご確認ください。

執筆日: 2026年9月7日/最終更新日: 2026年9月7日/情報の時点: 2026年9月時点
✍️ この記事を書いた人|ほげたろう 宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)保有。今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代や不動産投資の失敗も含めたリアルな体験と、日々データと格闘するエンジニア目線の両方から「不動産ゼロからナビ」を運営。4人家族、地方在住。「難しそう」を「なんとかなる」に変える情報を発信中。

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