不動産の囲い込みを見抜く方法|2025年法改正で売主が確認できること
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「大手に頼んでおけば、まず間違いないだろう」。都内のマンションを売って千葉へ住み替えようとしたとき、多くの人がそう考えます。私も営業側にいたので、その安心感がどこから来るのかはよくわかります。
ただ、売主が損をする仕組みは、会社の規模ではなく「その会社がどこから手数料をもらっているか」で決まります。売主と買主の両方から受け取る形になっていると、売主の利益と会社の利益がぶつかる瞬間がある。その代表が「囲い込み」です。
私は宅建士(2014年取得)で、不動産営業を5年経験し、今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発しています。だからこそ言えるのですが、囲い込みは特別に悪い会社だけがやっている例外ではなく、報酬の仕組みから自然に発生してしまうものでした。
この記事では、囲い込みが起きる構造と、2025年1月に変わった法律の中身、そして売主が自分の手でレインズの取引状況を確認する方法まで整理します。読み終えたときには、依頼先を「知名度」ではなく「報酬体系」で選べるようになり、数百万円の取りこぼしを防いだうえで、住み替え先の予算を確保できるはずです。
囲い込みとは何か。なぜ売主の手取りが減るのか
囲い込みとは、売却を任された不動産会社が、他社から入った購入の問い合わせを断り、自社で買主を見つけようとする行為です。売主にとっては、買主候補が減るという一点で不利益になります。
理由は報酬の仕組みにあります。仲介会社が受け取れる手数料は、売主側からと買主側からの2方向。買主を他社が連れてきた場合、自社が受け取れるのは売主側の1件分だけです。ところが買主も自社で見つければ、同じ1件の取引で2倍の手数料になります。この「両手仲介」を狙うと、他社の買主を歓迎しない動機が生まれます。
実際の現場では、露骨な拒否は起きません。他社の営業から物件確認の電話が入ったとき、「ただいま商談が入っておりまして」「先に申し込みが入っている状況です」と伝えれば、それだけで相手は次の物件へ移ります。嘘とも言い切れない曖昧な言い方が使えるので、記録にも残りません。売主には「反響はあるのですが、なかなか決まらなくて」と報告されます。
結果として起きるのは、2つです。買主候補が減るので価格競争が働かず、成約価格が下がる。そして売却期間が延びる。住み替えの場合、売却が遅れれば次の物件の購入も遅れます。値下げして早く決めるか、住み替えを諦めるかという判断を迫られることになります。
つまり囲い込みは、悪意の有無に関係なく、両手仲介を狙える構造がある限り発生しうるということです。売主が見るべきは担当者の人柄ではなく、その会社の儲け方だと言えます。
専任・専属専任は1社に絞る契約なので、その1社が囲い込んだときに逃げ道がなくなります。契約形態ごとの違いは媒介契約の選び方|一般・専任・専属専任のメリット・デメリットと囲い込みのリスクで詳しく解説しています。
2025年1月、囲い込みは行政処分の対象になった
長年グレーゾーンだった囲い込みは、2025年1月1日から明確に行政処分の対象になりました。2026年9月時点で、これが最新のルールです。
根拠は宅地建物取引業法施行規則の改正です。国土交通省の発表によると、レインズには平成28年から、売主や他の宅建業者が物件への取引の申込み状況を確認できる「ステータス管理機能」が導入されていました。この機能の実効性を確保するため、令和6年6月に施行規則を改正し、令和7年1月1日より、宅建業者に対してレインズへの物件の取引状況の登録を義務付けることとした、とされています。
具体的には、専任媒介契約を結んだときにレインズへ登録すべき事項として「宅地建物の取引の申し込みの受付に関する状況」が新たに明記されました。そして「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の改正により、この登録が正しくない場合は宅建業法第65条第1項の指示処分の対象になることが示されています。
売主にとって実務的に効くのは、もう一つの変更です。国土交通省の発表では、売主が自らの物件の取引状況を確認しやすくなるよう、レインズに物件を登録した際に宅建業者から売主へ交付される「登録証明書」に、令和7年1月4日より2次元コードを記載するようシステム改修を行い、売主専用画面へのアクセスを向上させる、とされています。
つまり売主は、担当者の報告を待たずに、自分のスマホから取引状況を確認できるようになりました。「反響はあるんですが」という説明が本当かどうかを、売主側から検証できる時代になったということです。確認手順は後ほど整理します。
売却の依頼先は「報酬体系」で3つに分かれる
依頼先を選ぶとき、見るべきは会社名やテレビCMではなく、報酬体系です。どこからお金をもらう仕組みかで、売主との利害が一致するかどうかが決まるからです。
ここでは色を使って整理します。売主と利益がぶつかりうる仕組みを警戒色、構造的にぶつからない仕組みを安心色にしています。特定の会社を指しているものではありません。
※スマホの方は表を横にスクロールできます
| 比較軸 | 両手型(一般的な仲介) | 完全片手型 | 買取 |
|---|---|---|---|
| 手数料の受け取り先 | 売主と買主の双方から受け取ることがある | 売主からのみ | 仲介手数料なし(会社が買主) |
| 囲い込みの動機 | 構造的に発生しうる | 構造的に発生しない | 該当しない |
| 買主候補の広さ | 運用次第で狭まる | 他社の買主も歓迎される | 1社のみ |
| 売却価格の傾向 | 競争が働けば高いが、囲い込まれると下がる | 市場競争が働きやすい | 市場価格より低くなりやすい |
| スピード | 数か月かかることが多い | 市場に広く出るぶん動きやすい | 最短。日程を確定しやすい |
| 知名度・店舗網 | 高い。家族の理解を得やすい | 低め。対応エリアも限定的 | 会社による |
両手型(一般的な仲介)
売主側と買主側の双方から手数料を受け取れる形です。1件の取引で報酬が2倍になるため、他社の買主より自社の買主を優先する動機が生まれます。悪質という話ではなく、営業目標がそう組まれていれば自然にそうなる、という構造の問題です。
完全片手型
売主からしか手数料を受け取らないと決めている形です。買主を他社が連れてきても自社が連れてきても報酬が変わらないので、囲い込む理由そのものがなくなります。この記事で紹介するミライアスの「スマート仲介」がこのタイプで、両手型報酬と顧客の囲い込みを行わないことを掲げています。
買取
仲介ではなく、不動産会社が直接買い取る方法です。買主を探す工程がないので早く確実に現金化できますが、会社は転売益を確保する必要があるため、市場価格より低くなるのが一般的です。転勤や相続で期限が切られている場合の選択肢と考えるのが現実的です。
完全片手型のデメリット3つ
先にデメリットから書きます。ここに納得できないなら、選ぶべきではないからです。
1つ目は、対応エリアが限定されていることです。ミライアスの場合、首都圏と関西圏が中心で、全国どこでも対応しているわけではありません。都内のマンションを売る分には問題ありませんが、地方の実家を売る場面では選択肢に入らないことがあります。
2つ目は、知名度が低く、家族の説得に手間がかかることです。住み替えは夫婦の共同意思決定なので、「聞いたことがない会社に大事な資産を任せるのか」と言われる場面は普通に起きます。テレビCMを流している会社なら説明は不要です。ここは実務上、地味に大きな壁になります。
3つ目は、口コミの母数が少ないことです。利用者数が大手より少ないため、判断材料としての口コミが集まりにくい構造があります。良い評判が多く見えても、件数自体が少なければ統計的な意味は薄いという点は正直に押さえておくべきです。
3つとも「知名度と規模」に由来するデメリットで、売主が損をする方向のリスクではありません。一方、両手型のデメリットである囲い込みは、直接手取り額に効きます。どちらのリスクを取るかという話であれば、判断の軸ははっきりしています。エリアが対象内であれば、まず査定だけ取って比較するのが合理的です。
完全片手型のメリット
最大のメリットは、売主と会社の利益が構造的に一致することです。担当者の良心に期待するのではなく、仕組みとして囲い込む理由がない状態を作れます。
理由はシンプルで、買主が自社経由でも他社経由でも報酬が変わらないからです。すると会社にとって最も合理的な行動は「一番高く買ってくれる人を、どこからでも早く見つける」ことになります。売主が望んでいることと完全に同じ方向を向きます。
実務面でも差が出ます。他社からの物件確認をかわす作業がなくなるので、レインズのステータスを正しく登録し続けることに抵抗がありません。2025年1月からの登録義務化は、こうした会社にとっては元々やっていたことが明文化されただけ、という位置づけになります。
加えて、ミライアスは仲介手数料の低減や、建物・設備の保証を付けた売却を打ち出しています。手数料は売却価格が大きいほど効いてくるので、都内マンションのように価格帯が高い物件では差額が無視できません。ただし条件や上限は時期によって変わるため、最新の内容は公式の案内で必ず確認してください。
囲い込みを自分で確認する3ステップ
会社を選んだあとにやるべきことがあります。任せきりにせず、売主自身がレインズの取引状況を確認することです。2025年1月の制度変更で、これが誰でもできるようになりました。
理由は、囲い込みが「報告されない」形で起きるからです。担当者から見れば、電話をかわしただけで記録は残りません。だから売主側から、会社を通さずに一次情報を見にいく必要があります。
登録証明書を受け取る。専任媒介または専属専任媒介を結ぶと、不動産会社はレインズに物件を登録し、宅建業法第34条の2第6項に基づいて売主に「登録証明書」を交付します。届かない場合は必ず請求してください。これは会社の裁量ではなく、法律上の義務です。
2次元コードから売主専用画面を開く。令和7年1月4日以降に交付された登録証明書には2次元コードが記載されており、売主専用画面へアクセスできます。ここで自分の物件の「ステータス」を確認します。売り出し中なのか、申込みを受け付けている状態になっているのかが表示されます。
担当者の報告と突き合わせる。ここが本番です。「問い合わせが少なくて」と報告されているのに、ステータス上は商談中や書面による申込みありになっていないか。逆に、公開されているはずの物件が検索に出てこない状態になっていないか。食い違いがあれば、その場で説明を求めてください。
強く追及する必要はありません。「レインズのステータスを確認したいので、登録証明書と現在の登録状況を見せてください」と一言伝えるだけで十分です。売主が確認する手段を持っていると相手が理解した時点で、囲い込みは成立しにくくなります。それでも回答を渋る場合は、媒介契約の更新(専任は3か月ごと)のタイミングで依頼先を見直す判断材料になります。
完全片手型が向く人・大手が向く人
結論を先に書きます。都内で価格帯の高いマンションを、時間に多少の余裕を持って売るなら完全片手型。地方物件や、家族の合意形成を優先したいなら大手です。
完全片手型が向くのはこういう方です。
- 首都圏・関西圏のマンションや戸建てを売る
- 売却価格が数千万円規模で、手数料と成約価格の差額が大きく効く
- 住み替え先の予算を1円でも多く確保したい
- 会社の知名度より、仕組みとして損をしないことを優先できる
反対に、大手を選んだほうがいいのはこういう方です。
- 対応エリア外の物件を売る
- 相続などで共有者が複数いて、全員の合意に知名度が必要
- 売却と同時に買い替え先も同じ会社で探したい
迷ったときの現実的な進め方は、両方から査定を取ることです。査定は無料で、依頼したからといって契約義務は発生しません。提示された価格と、その根拠の説明の仕方を並べれば、どちらが自分の物件に真剣かは見えてきます。査定額のばらつきがなぜ生まれるかは不動産AI査定の仕組みと賢い使い方|なぜ価格にバラつきが出るのかにまとめています。
売り出す前に査定を取っておくべき理由
査定を取るなら、媒介契約を結ぶ前です。順番を間違えると、比較する権利そのものを失います。
理由は、専任・専属専任を結んだ時点で他社に依頼できなくなるからです。契約期間は最長3か月。「他社の話も聞いてみたい」と思っても、3か月待つか、解約を申し出るかになります。住み替えのスケジュールが決まっている人にとって、この3か月は重いです。
もう一つ、住み替えの資金計画にも直結します。売却価格が確定しないと、次に買える物件の予算が決まりません。売却益が出る場合は3,000万円特別控除と住宅ローン控除の関係で、売る順番と買う順番によって手取りが数百万円変わることもあります。詳しくは3,000万円特別控除と住宅ローン控除の関係、ケース別に徹底解説で解説しています。
キャンペーンや期限を理由に急かすつもりはありません。ただ「媒介契約を結ぶ前にしか比較できない」というのは、制度上の事実です。ここだけは、後から取り返せません。
ミライアスの「スマート仲介」は、両手型報酬と顧客の囲い込みを行わない完全片手型の売買仲介サービスです。査定はWebから無料で申し込めます。入力後に契約義務は発生しないので、まずは価格と説明の中身を比較材料として手に入れてください。
対応エリアは首都圏・関西圏が中心です。エリア外の場合は大手仲介との併用を検討してください。
まとめ:会社の規模ではなく、報酬体系で選ぶ
この記事の要点を整理します。
- 囲い込みは、売主と買主の双方から手数料を受け取れる構造から自然に発生する。担当者の人柄の問題ではない
- 2025年1月1日から、レインズへの取引状況の登録が義務化され、正しく登録されていない場合は宅建業法第65条第1項の指示処分の対象になった
- 登録証明書の2次元コードから、売主が自分で取引状況を確認できるようになった
- 依頼先は「両手型・完全片手型・買取」の3つに分かれる。売主と利益が構造的に一致するのは完全片手型
- 完全片手型のデメリットは対応エリアと知名度。手取り額が減る方向のリスクではない
- 比較できるのは媒介契約を結ぶ前だけ
都内のマンションを売って千葉へ住み替えるなら、売却価格の数百万円は、そのまま次の家の広さや駅からの距離に変わります。80㎡台を諦めるか諦めないかの差が、依頼先の選び方ひとつで生まれることは珍しくありません。
まずは査定を取り、価格と説明の中身を並べてみてください。売った後の資金計画については初めてのマンション売却|買い叩かれないために最初にやること、住み替え先のローンについては住宅ローンどこで借りる|借入先5タイプと審査に落ちない準備が参考になります。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・税務的・投資的アドバイスではありません。記載内容は2026年9月時点の情報です。制度・手数料・対応エリア・キャンペーン条件は変更される場合があります。実際のご判断にあたっては、宅地建物取引業者・税理士等の専門家にご確認ください。
宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)保有。今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代や不動産投資の失敗も含めたリアルな体験と、日々データと格闘するエンジニア目線の両方から「不動産ゼロからナビ」を運営。4人家族、地方在住。「難しそう」を「なんとかなる」に変える情報を発信中。
執筆日:2026年9月8日/最終更新日:2026年9月8日/情報の時点:2026年9月