家庭用太陽光は“投資”より“保険”|メリット・デメリットと「蓄電池はいくらで何日持つか」
電気代、ここ数年でしっかり上がりましたよね。検針票を見るたびに、ため息が出ます。
そんな中で「自宅に太陽光をのせれば電気代が減るし、余った電気を売れば副収入にもなる」と聞くと、やらない理由がない気さえしてきます。最近は自治体の広報に「県と協定」「みんなのおうちに太陽光」といった共同購入のチラシが入ってくることもあって、なおさら背中を押されますよね。
でも結論から言うと、太陽光は「自家消費で電気代を少し下げる」目的ならアリ、「投資・副収入で儲ける」目的なら、20年単位で変数が多すぎて手放しではおすすめしにくい——というのが私の今の考えです。
私は宅建士(たっけんし/2014年取得)・FP1級(2019年取得)を持ち、今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発しています。家やお金まわりの「数字のからくり」を見るのが日々の仕事です。
この記事では、設置費用・売電価格・メンテ費用といった“裏側の数字”を公的データで全部並べたうえで、共同購入の落とし穴と、千葉に移住して家を建てる人が知っておくべきことまで、正直にまとめました。読み終わるころには、「やる・やらない」を雰囲気ではなく数字で決められるようになります。
結論
太陽光発電は、「自分の家で使う電気をまかなって、電気代の上昇から身を守る」という守りの目的ならアリ。でも「設置費を回収して副収入を得る」という攻めの目的だと、設置費・売電価格・メンテ・パワコン交換・20年後の不確実性…と変数が多すぎて、誰にでも「得します」とは言い切れません。
なぜそう言えるのか。理由はシンプルで、太陽光の“おいしさ”を支えていた売電価格が、制度開始時の3分の1近くまで下がったからです。
固定価格買取制度(FIT)が始まった2012年、住宅用の売電価格は1kWhあたり42円でした。それが2025年度の上半期には15円。10年あまりで実に約64%も下落しています(経済産業省 調達価格等算定委員会のデータ)。つまり「余った電気を高く買ってもらえる」という前提が、もう昔の話になっているんです。
だから今の太陽光は、「売って稼ぐ」より「自分で使って電気を買わずに済ませる(=自家消費)」ことに価値の中心が移りました。これは投資の話というより、生活防衛の話です。ここをはき違えると、「思ったより儲からない」「こんなはずじゃなかった」になりやすい。まずはこの前提を押さえておきましょう。
設置費用と売電価格
「やるかどうか」を考える前に、入口と出口の数字をそろえましょう。入口=設置費用、出口=売電価格と電気代の節約分です。
入口:4〜5kWで130万円前後が今の相場
結論、新築の戸建てに一般的な4.5kW前後を載せると、設置費用はおおむね130万円前後が目安です。
経済産業省の資料によると、2024年の新築住宅用の太陽光発電システム費用は1kWあたり28.6万円。一般的な家庭の平均的な容量は4.5kWほどなので、掛け合わせると約130万円という計算になります。費用の内訳はパネルが約47%、設置工事費が約29%。残りがパワコンや架台などです。
この28.6万円は「新築」の数字。すでに建っている家に後付けする場合は、足場や配線のやり直しで割高になりがちです。「移住して中古の戸建てを買って太陽光も」というケースは、見積もりが新築相場より上ぶれする前提でいてください。
出口:売電は「最初だけ高い」仕組みに変わった
2025年10月からは、住宅用に「初期投資支援スキーム」という新しい買取の形が始まりました。これがちょっとクセがあります。
従来は「10年間ずっと同じ単価」でしたが、新スキームでは最初の4年間は24円/kWh、5〜10年目は8.3円/kWhという二段階。前半に高く買って初期費用を早く回収させ、後半はぐっと下げる——という設計です。10年ならすと平均14.58円ほどで、結局トータルでは従来の15円とほぼ変わりません。「前倒しで戻ってくる」だけ、と理解しておくのが正確です。
ここで「自家消費」という言葉を、ちゃんと押さえておきましょう。自家消費とは、文字どおり“発電した電気を、売らずに自分の家で使うこと”です。昼間に太陽光でつくった電気で冷蔵庫を動かし、エアコンをつけ、洗濯機を回す。そのぶん電力会社から買う電気が減るので、毎月の請求が下がる——これが自家消費です。多くの家庭は、発電した電気の約3分の1を自分で使い(自家消費)、約3分の2を売っています(余剰売電比率67.3%・2024年データ)。
じつは今の太陽光を考えるうえで、いちばん大事なのがここ。同じ1kWhの電気でも、“自分で使う”のと“売る”のとでは、価値が倍くらい違うんです。
売電で入ってくるのは1kWhあたり約15円。いっぽう自分で使えば、本来30円前後で買っていた電気を“買わずに済む”ので、約30円分の価値になります(全国家庭電気製品公正取引協議会の目安は1kWh=31円。東京電力の従量電灯Bでも、使用量が多い段階の単価は36円台です)。つまり、作った電気は売るより自分で使ったほうが、家計へのインパクトはざっくり2倍。
しかも、家庭が電気を買う単価はこの3年で約26円→36円へと上がり続け、逆に売電単価は下がり続けています。“使えば得する額”は上がり、“売って入る額”は下がる。この差は、年々ひらいていく方向です。だから今の太陽光は「たくさん売って稼ぐ」より「たくさん自分で使って、高い電気を買わずに済ませる」ほうが得、という構造に変わったんです。東京都の試算でも、新築に4kWを載せた場合の光熱費削減は年間およそ9.2万円(月約7,700円)とされています。
裏側の数字
太陽光が「思ったより得しない」と言われるのは、たいていパンフレットに大きく書かれない3つの数字を計算に入れていないからです。ここをちゃんと並べます。
① パワコン交換:10〜15年で約42万円が一度くる
パワーコンディショナ(パワコン=発電した直流を家庭用の交流に変える装置)は、寿命がおおむね10〜15年。交換費用は経済産業省の資料で1台あたり約42.3万円とされています。20年使うなら、途中で一度はこの出費が来る前提で考える必要があります。パネル本体は20〜30年もっても、パワコンは先に寿命が来る——ここがミソです。
② 定期点検:4年に1回・1回あたり約2万円
「メンテナンスフリー」という売り文句を聞くことがありますが、正確ではありません。資源エネルギー庁の資料では、定期点検は4年に1回程度・1回あたり約2万円が目安とされています。運転維持費はパワコン交換も含めると、ざっくり1kWあたり年6,300円ほど。4.5kWなら年2.8万円前後がランニングでかかる計算です。
③ 卒FIT:10年後の売電は6〜10円に落ちる
FITの買取期間は住宅用で10年。この10年が終わった後(卒FIT)の売電単価は、各電力会社が独自に決めるため、おおむね6〜10円/kWhまで下がります。11年目以降は「売っても大して入らない」ので、蓄電池を足して自家消費に回すか…と次の投資判断が必要になります。
ざっくり20年シミュレーションしてみた
では、これらを全部のせて試算してみます。あくまで一例ですが、数字の“肌感”をつかむために。
| 項目 | 前提・金額 |
|---|---|
| 設置容量 | 4.5kW(新築) |
| 設置費用 | 約130万円(補助金は地域差が大きいため、ここでは控えめにゼロ想定) |
| 年間発電量 | 約5,000kWh |
| 1〜10年の収支 | 自家消費の節約+売電で、合計おおむね90〜100万円のプラス |
| 差し引く費用 | 定期点検 約2万円×2回、11〜15年目あたりでパワコン交換 約42万円 |
| 回収の目安 | 順調でも12〜16年あたり。前提が崩れると20年たっても回収しきれないことも |
この試算が伝えたいのは「太陽光はダメ」ということではありません。「条件がそろえばトントン〜ややプラス。でも“確実に儲かる投資”では、もうない」ということです。発電量は屋根の向き・天気・周囲の影で変わり、パワコンが想定より早く壊れることもある。だからこそ私は、「20年というスパンで見て、はっきり“得をした”と言い切れる人は、思っているより少ない」と考えています。
もうひとつ、見落としがちなのが「ローンで買うと、金利の分だけ回収のハードルが上がる」という点です。太陽光やマイホームをローンに組み込むと、上の試算に利息が乗ってきます。借りる先が変わるだけで、総返済額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。
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自家消費なら結局トクなのか
ここまで費用の話が続いたので、「やっぱりやめとけって話か」と感じた方もいるかもしれません。でも、いちばん知りたいのはそこじゃないですよね。「売って儲ける」じゃなくて、「自分で使うぶんに限れば、結局トクなのか損なのか」——ここに正直に答えます。
標準的なケース(4.5kW・130万円・補助金なし)なら、自家消費を軸に考えれば、長い目で見て元は取れて、少しプラスになることが多いです。ただし回収まで15年前後かかるので、正しい期待値は「すぐ儲かる」ではなく、「電気代の値上がりに対する“長期の保険”+ちょっとお得」。そしてどれだけトクできるかは、あなたが昼間どれだけ電気を自宅で使えるかで大きく変わります。
理由はシンプルで、さっきの「自家消費は売電の約2倍の価値」がきいてくるからです。標準的な4.5kWで年5,000kWhを発電する家なら、自家消費分の節約と売電分を合わせて、ざっくり年10万円前後のプラス(東京都の試算ともほぼ一致)。これでメンテやパワコン交換を差し引いても、パネルの寿命25〜30年のうち、15年前後で設置費を回収し、その後は上乗せのプラスになっていく、というのが標準的な絵です。
つまり「自家消費=損」ではありません。“高くなり続ける電気を、買わずに自前でまかなう”という意味では、ちゃんと理にかなった選択です。ただ、回収が長い=その間に引っ越したり、屋根やパワコンに想定外の出費が出ると、絵が狂う。だから「確実に儲かる投資」ではない、という話なんです。
ここが本題|「トクの大きさ」はあなたの暮らし方で決まる
そして、このブログを読んでくれている共働きのご家庭には、正直にお伝えしておきたい落とし穴があります。それは、自家消費でトクできる量は「昼間に家でどれだけ電気を使うか」で決まる、という点です。
太陽光がいちばん発電するのは、日中の晴れた時間帯。でも共働きで日中は家に誰もいないと、その電気を自宅で使いきれず、多くが「安い売電(約15円)」に回ってしまいます。せっかく“30円分の価値”がある電気を、半額で手放すイメージです。逆に、在宅時間が長い家庭や、昼間に家電をしっかり動かせる家庭ほど、自家消費の取り分が増えて得が大きくなります。同じ設備でも、暮らし方しだいで「お得度」がはっきり変わる——ここは他ではあまり語られませんが、判断の核心です。
自家消費を“取りに行く”2つの方法
では、日中いない家庭は損か?というと、打ち手はあります。
- 1家電の時間を昼にずらす。食洗機・洗濯乾燥機・エコキュート(お湯はり)・EVの充電などを、タイマーで“太陽が出ている昼間”に動かす。これだけで自家消費率は上げられます。手間とのバランス次第ですが、いちばんお金のかからない方法です。
- 2蓄電池を足す。昼の余った電気をためて、夜に使う。自家消費率はぐっと上がります。ただし蓄電池は本体だけで100万円前後と高く、「自家消費率は上がるが、その投資ぶん回収は伸びる」というトレードオフ。元を取る前提なら、慎重に試算してから足すのが正解です。
まとめると、「自家消費=無条件にお得」ではなく、「自家消費を“どれだけ取りに行けるか”でお得になる」が正確な言い方。あなたの家の昼間の電気の使い方を思い浮かべて、「うちは取りに行けそうか?」をイメージしてみてください。ここがイメージできる家庭なら、自家消費目的の太陽光は十分に“アリ”です。
メリットとデメリット
ここまでの数字を、いったん表に整理します。「明るい面」だけ見て決めないためのチェック表として使ってください。
◯ メリット
- ✅電気代の上昇に強くなる。自分で使う分を発電でまかなえる(年9万円前後の削減例も)
- ✅停電時に電気が使える。災害の多い日本では安心材料になる
- ✅前半に手厚い売電(新スキームの1〜4年目は24円)で回収を前倒しできる
- ✅CO2削減という環境面の意義がある
△ デメリット・注意点
- ⚠️初期費用が130万円前後と大きく、回収まで10年超かかる
- ⚠️パワコン交換に約42万円。10〜15年で一度くる
- ⚠️売電価格が下落。卒FIT後は6〜10円まで落ちる
- ⚠️発電量は屋根の向き・影・天気しだいでブレる
- ⚠️屋根への施工で雨漏りリスク。業者の腕に左右される
こう並べると見えてくるのは、太陽光の良し悪しは「商品の優劣」より「自分の家・暮らし方に合うか」で決まるということ。日中ほとんど家にいない共働き世帯と、在宅時間が長い世帯とでは、自家消費でトクできる量がまったく違います。ここを自分のケースに当てはめて考えるのが、いちばん大事です。
共同購入
さて、本題の共同購入です。「県と協定」「みんなのおうちに太陽光」というチラシ、あの“安心感”の正体を分解してみます。
結論からいうと、共同購入は「相場よりかなり高い悪質業者を避けやすい」という意味では有力な選択肢。ただし“自動的に最安・最適”ではない——というのが正直なところです。
仕組み:自治体が売っているわけではない
まず大事な事実から。こうした共同購入の多くは、自治体そのものが販売しているのではなく、運営する民間企業(営利企業)が自治体と協定を結んで実施しています。代表的な「みんなのおうちに太陽光」もアイチューザーという会社の運営で、参加した施工業者から手数料を受け取るビジネスモデルです。これ自体は悪いことではなく、まとめ買いの交渉力で価格を下げる正当な仕組みです。
運営側も「割引率はおおむね2割強」と説明しており、安く買えるのは事実。引っかかってほしいのは「だから無条件にお得」とは限らない、という一点です。
じつは我が家にもチラシが来て、一度検討しました
千葉に住んでいる我が家にも、この共同購入のチラシが届いたことがあります。千葉県も東京や神奈川と同じく、アイチューザー株式会社との協定でこの事業を実施しているんです(千葉県の公式ページに詳細があります)。参加登録は無料で購入義務もないので、「まずは土俵に乗ってみよう」と登録して、提案を受けるところまでは進めてみました。
ただ、出てきたプランは蓄電池とのセットで思ったより金額が張り、パネルも指定の機種。我が家の屋根に最適かというと微妙で…。結局、地元の業者にも相見積もりを取って見比べた結果、そのときは見送りました。「チラシの安心感」だけで即決しなくてよかった、というのが正直な感想です。共同購入が悪いという話ではなく、比べる相手を持ってから判断するのが大事だ、と身をもって感じた経験でした。
注意したいデメリット
- 1メーカー・機種が固定されがち。入札で選ばれた特定パネルしか選べず、自宅の屋根形状に最適化できない。「本当は5kW載る屋根なのに、指定機種だと3kWしか載らない」となれば、長期の発電量で損をする可能性があります。
- 2蓄電池とのセットで高額化しやすい。蓄電池は高い設備。必要性を十分に検討しないまま組み込むと、初期費用が一気に膨らみます。
- 3時期の自由がきかない。参加者を募る期間があり、自分の都合では進められないことがある。
- 4施工品質は業者しだい。屋根に穴を開ける工事なので、最終的には現場の職人の腕がものを言います。
自治体の名前が前面に出ていると、つい「ここなら安心」と決めたくなりますよね。でも、その安心感はいったん脇に置いて、価格と中身を冷静に見比べるのがコツです。共同購入は「適正な相場を知るためのベンチマーク(基準値)」として使うのが賢い使い方。届いた見積もりを“ひとつの基準”として、必ず地元の業者2〜3社からも相見積もりを取り、発電量・手出し額・保証内容を並べて比べる。これをやるだけで、判断の精度がまるで変わります。運営事務局自身も「他社のほうが良ければそちらで進めて問題ない」と案内しているくらいです。
千葉移住
このブログの読者に多い「都内から千葉へ移住して家を持つ」層には、もうひとつ知っておいてほしい違いがあります。太陽光は、東京で建てるか千葉で建てるかで“選択の自由度”がまるで違うのです。
東京都は2025年4月から、新築住宅への太陽光パネル設置を義務づける制度を始めました。ただし義務を負うのは家を建てる人(施主)ではなく、大手ハウスメーカー等の事業者(年間供給延床2万㎡以上、約50社が対象)。とはいえ大手で新築を建てる都民の多くは、結果的に太陽光が“前提に組み込まれた”家を選ぶことになります。
一方で千葉県には、こうした一律の設置義務はありません。つまり千葉で家を建てる・買うあなたは、「載せる・載せない」を自分の意思で選べる立場にいるということ。これは大きなアドバンテージです。
ただし裏を返せば、「自由=自己責任」でもあります。義務がないぶん、ハウスメーカーや共同購入の営業トークに乗るかどうかは、最終的にあなたの判断。だからこそ、ここまで見てきた数字——設置費・売電単価・パワコン交換・卒FIT——を自分のケースに当てはめて、冷静にソロバンをはじけるかどうかが効いてきます。
ここまで読んで感じてもらえたと思いますが、太陽光に限らず自宅購入そのものが、実は不動産投資と同じゲームです。何百万円という設備や、何千万円という家を、相手(売る側)のほうが圧倒的に情報を持っている状態で買う。これが住まいの怖いところです。
そして不動産は、高く買ってしまったら、その後どれだけ頑張っても取り返すのが難しい。太陽光の「こんなはずじゃなかった」も、家本体の「相場より高く買ってしまった」も、根っこは同じ。買う前の知識があるかどうかで、数百万円〜数千万円の差がつきます。
私自身、20年以上前にファイナンシャルアカデミーの不動産投資スクールを受講し、その後の13件の取引(自宅購入2件を含む)すべてで損を出していません。学んだ判断軸が、ずっと効いている実感があります。受講料は安くはありませんが、不動産で一度失敗したときの損失と比べれば、はるかに小さい出費です。
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太陽光は投資か保険か
ここまで読んで、「変数が多すぎて、結局トクなのか損なのか分からん」と感じた方もいると思います。じつはその感覚、半分は正しくて、半分はもったいない。太陽光を“何として見るか”を決めれば、判断はスッと定まります。3つのレンズで分けて考えてみましょう。
その前に:インフレの効き方は“片側だけ”ではない
「これからインフレで何でも値上がりするなら、売電価格も上がるのでは?」——そう思いますよね。でもここが大事なところで、インフレは太陽光の収支を“同じ方向には動かしません”。整理すると、こうです。
| インフレが進むと… | どう動く | あなたへの影響 |
|---|---|---|
| メンテ・パワコン交換費 | 上がる ▲ | 10〜15年後の交換費は今の42万円より高くなる前提で |
| 自家消費の価値 | 上がる ◎ | 買う電気が高くなるほど「使わずに済ます」効果が増す=ヘッジになる |
| 売電収入 | 動かない ✕ | FIT単価は契約時の値で10年間固定。物価が上がっても上がらない |
つまり「売って稼ぐ太陽光」はインフレで不利になり、「自分で使う太陽光」はインフレで有利になる。バラバラに見えて、ちゃんと一本の筋が通っているんです。これを踏まえると、3つのレンズの答えが見えてきます。
3つのレンズで見ると、答えが定まる
- 1「儲ける投資」として見る → 正直、おすすめしません。FIT低下・コスト上昇・15年の長期回収を考えると、リスクに対して見返りが見合いにくい。“よく分からないものに大きく賭けない”という投資の原則どおり、ここは見送りで構いません。
- 2「電気代インフレのヘッジ」として見る → これは理にかなう。将来の値上がりに賭けるのではなく、“値上がりしてもダメージを受けにくい体”をつくる発想。自家消費をしっかりできる家ほど効きます。
- 3「災害時の保険」として見る → アリ。ただし条件つき(次で詳しく)。停電時に電気が使えるのは、子育て世帯にとって現金には代えにくい安心です。
②と③は「将来の値段を当てにいくギャンブル」ではありません。守りたいもの(電気代の上昇/停電時の最低限の電気)に、保険料を払う感覚です。だから「よく分からないものには投資するな」の射程の外にある。逆に、純粋にお金を増やしたいだけなら、太陽光は選ばなくていい——そう割り切れます。
ここからは、私の正直な意見です
データを並べたうえで、最後に私個人の本音を書きます(あくまで一意見として読んでください)。経済性“だけ”で言えば、私は自家消費目的であっても、積極的にはおすすめしません。
理由は、②のインフレヘッジで得られるのは結局「少しお得」の範囲で、それに対して背負うリスク——設置費130万円、15年級の長期回収、パワコンの故障、引っ越しや屋根のトラブル、発電量のブレ——が、見返りと釣り合っていないと感じるからです。数百万円を10年以上ロックするという重さを考えると、私なら経済目的“だけ”では動きません。同じお金なら、もっと身軽で分かりやすい使い道もあります。
ただ、ここで一つだけ、私の判断が揺れるポイントがあります。それが③の「災害時の備え」です。お金の損得を超えて、停電時に冷蔵庫が動き、スマホが充電でき、夏に最低限の涼がとれる——小さな子どもがいる家庭にとって、この安心は数字に換算しきれません。ここだけは「保険料としてなら払う意味があるかも」と、私自身も思える部分です。だからこそ、その“保険の中身”=蓄電池が実際どこまで役に立つのかを、正確に知っておく必要があります。
⚠️ いちばんの落とし穴:「保険」にしたいなら蓄電池がほぼ必須
ここは、後から知って「思ったより高くついた」となりやすい最重要ポイントなので、はっきり書きます。太陽光“だけ”では、災害時の備えとしてはかなり弱いです。
「太陽光があれば停電でも安心」と思いがちですが、蓄電池のない一般的な太陽光は、停電時に使えるのが「昼間・晴れているとき・専用コンセント1口・最大1.5kW程度」に限られます。スマホの充電と冷蔵庫を動かすのがやっと、というレベル。夜は使えませんし、曇れば出力も不安定です。
「太陽光をつければ災害時もバッチリ」と思っていたのですが、夜も含めて家を動かす本当の備えにするには、昼の電気をためて夜に使う“蓄電池”が必要です。そして蓄電池は本体だけで100万円前後、容量によっては150万円規模になることも。つまり、保険としての役割を厚くしようとするほど、初期費用は太陽光+蓄電池でぐっと膨らみます。「保険を厚くするほど、投資としての採算は悪くなる」——このトレードオフを知らずに進めると、見積もり段階で予算が一気に跳ね上がって驚くことになります。
いくら出せば、何日分の安心が買えるのか
「蓄電池が要るのは分かった。で、結局いくら出せば何日持つの?」——ここが知りたいですよね。予算別に「買える容量」と「停電時に持つ日数」を整理します。まず基準として、停電時に冷蔵庫・照明・スマホ充電など“最低限の生活”をすると、1日あたり約5kWh。これを覚えておくと、容量から日数がイメージできます。なお蓄電池の相場は工事費込みで1kWhあたりおおむね15〜20万円(平均的な12kWh級で総額約210万円)が今の目安です。
| 予算(蓄電池の設置総額/太陽光は別) | 買える容量の目安 | 蓄電池だけで持つ日数 ※最低限の生活 | 太陽光と併用すると(晴天時) |
|---|---|---|---|
| 約100万円 | 約5kWh (特定負荷型が中心) | 約1日 冷蔵庫・照明・スマホで十数時間。エアコンを使うと数時間で空 | 節電すれば、晴れた日は最低限の生活を回せる |
| 約200万円 | 約10〜12kWh (全負荷型も射程) | 約2日 夜間も含めて主要な家電をまかないやすい | 晴れていれば、最低限の生活を継続的にしのげる。エアコンも時間を区切れば |
| 約300万円 | 約15kWh以上 (全負荷・大容量) | 約3日前後 普段に近い生活に最も近い | 晴れていれば、1週間級の停電でも最低限の生活を維持しやすい |
そして、ここでいちばん大事なのが「太陽光と併用したとき」です。太陽光がついていれば、晴れた日は昼間に蓄電池を充電できるので、「昼ためて夜使う」を繰り返せます。つまり容量の数字以上に、長い停電でも粘れる。逆に蓄電池“単体”だと、ためた分を使い切ったら終わりです。災害への備えとしては、太陽光+蓄電池の組み合わせが本命、というわけです。
ここは誤解しやすいのですが、“いつもどおりの生活”(1日13〜14kWh)を蓄電池だけで1週間まかなうのは、現実的ではありません。単純計算で約90kWh、価格にして1,000万円超・設置スペースも巨大になり、現実的な選択肢になりません。「日数」はお金(容量)で買うより、“太陽光+ほどほどの蓄電池+節電”で稼ぐのが正解です。だから予算別に見ても、長い停電を支えるのは「容量」より「晴天時に充電できる太陽光があるかどうか」なんです。
もう2つ注意を。①同じ容量でも、訪問販売やハウスメーカー経由は相場より50〜100万円ほど高いことがあります。必ず複数社で相見積もりを。②国や自治体の補助金で実質負担は下げられます(千葉県内も市町村ごとに蓄電池の補助制度があります)。ここで挙げた金額は補助金“前”の目安です。
もう一つだけ仕様の話を。停電時に「家中の電気が使える」のは“全負荷型”という上位タイプで、価格は高め。安い“特定負荷型”は、あらかじめ決めた回路(例:リビングのコンセントと冷蔵庫だけ)しか使えません。「停電してもエアコンを使いたい」なら、全負荷型か・200Vに対応しているかまで、見積もりで必ず確認しておきましょう。
こうして並べると、「いくら出せば、どれだけの安心が買えるか」が見えてきます。電気代を少し下げたいだけなら太陽光単体でいいし、停電時の備えまで本気で欲しいなら、太陽光(約130万円)+蓄電池(100〜300万円)の総額で考える。ここを混ぜたまま営業トークに乗ると、「電気代の節約のつもりが、いつの間にか総額400万円超の契約をしていた」となりがちです。目的(どのレンズか)と、出せる予算を先に決めてから、見積もりを取りましょう。
まとめ
長くなったので、要点を整理します。
- ①太陽光は「自家消費で電気代を下げる」ならアリ、「副収入で儲ける」なら変数が多すぎて手放しでは勧めにくい
- ②設置費は新築4.5kWで約130万円。売電単価は開始時42円→今15円と大きく下落している
- ③パワコン交換約42万円・定期点検・卒FIT後6〜10円という“裏の数字”を入れて初めて本当の損得が見える
- ④共同購入は相場を知るベンチマークとして使い、必ず複数社と相見積もりを
- ⑤東京と違い千葉は設置義務なし=自分で選べる。だからこそ数字で判断する力が効いてくる
- ⑥インフレでも売電単価は固定で上がらない。得をするのは「売る」より「自分で使う」ほう
- ⑦太陽光は「投資」より「電気代ヘッジ+災害保険」と捉えると判断がブレない
- ⑧ただし“保険”にするなら蓄電池がほぼ必須(+100万円前後)。目的を決めてから見積もりを
「電気代の上昇に備えたい」「災害時の備えがほしい」という目的なら、太陽光は十分に良い選択肢です。一方で、お金を増やすこと自体を主目的にするなら、明るい面だけでなく裏側の数字まで全部のせてから決める。大事なのは「やる・やらない」を誰かのチラシで決めないこと。あなたの屋根、あなたの暮らし方、あなたの資金計画に当てはめて、自分の数字で判断してください。それができれば、「こんなはずじゃなかった」はかなりの確率で避けられます。
宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)保有。今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代や不動産投資の失敗も含めたリアルな体験と、日々データと格闘するエンジニア目線の両方から「不動産ゼロからナビ」を運営。4人家族、地方在住。「難しそう」を「なんとかなる」に変える情報を発信中。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の商品・サービスの購入や契約を推奨・保証するものではありません。記載の費用・売電価格・制度は執筆時点の公的データに基づくもので、今後変更される可能性があります。実際の導入可否や収支は、屋根の条件・地域・各社見積もりにより大きく異なります。個別の判断は、必ず複数の専門業者や有資格の専門家にご相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。