「0円でも売れない」と言われた土地、本当に打つ手なし?宅建士が教える6つの選択肢
「家を建てられない土地だから、0円でも売れませんよ」——不動産屋にそう言われて、固定資産税だけを払い続けるしかないのかと、肩を落としていませんか。最後は相続放棄するしかない、と告げられた方もいるかもしれません。
でも、一社にそう言われただけで諦めるのは、かなり早いです。建てられない土地でも、手放したり活かしたりする道は一つではありません。とくに2023年からは、相続した土地を国に引き取ってもらえる新しい制度まで始まっています。
この記事を読み終える頃には、「うちの土地は、まずどこに相談して、どの順番で動けばいいのか」がはっきりします。重い荷物だった土地を、固定資産税の負担ごと手放せる可能性が見えてくるはずです。
そもそもなぜ「家が建てられない土地」になるのか
結論からいうと、「建てられない理由」によって打つ手はまったく変わります。だから、最初にやるべきは「なぜ建てられないのか」を正確に知ることです。
「建てられない」とひと口に言っても、実際には市街化調整区域なのか、再建築不可なのか、借地なのか、原因はいくつもあります。原因が違えば、売り先も活用法も、使える制度も変わってきます。ここを飛ばして「とにかく売れない土地」とまとめてしまうと、本当は使えたはずの選択肢を見逃してしまうんです。代表的な3パターンを見ていきます。
接道義務を満たしていない「再建築不可」
いちばん多いのが、接道義務(せつどうぎむ)を満たしていないパターンです。建築基準法の第43条第1項では、建物を建てる敷地は「幅員4m以上の建築基準法上の道路に、2m以上接していなければならない」と定められています。火事のときの避難や、消防車・救急車の通行を確保するためのルールです。
この条件を満たさない土地は「再建築不可(さいけんちくふか)」となり、今ある建物を壊すと、新しく建て直せません。接道義務がきちんと法律に整理されたのは1981年(昭和56年)以降なので、それより前に建った古い家には、現行ルールを満たしていないものが少なくないんです。
ただ、これにも救済措置があります。建築基準法第43条第2項では「認定(1号)」と「許可(2号)」という制度が用意されていて、一定の基準を満たして特定行政庁の認定を受けたり、建築審査会の同意を得て許可を取れたりすれば、建て替えできるケースがあります(かつて「43条但し書き」と呼ばれていたものが、平成30年の法改正でこの形になりました)。つまり「再建築不可」と言われても、調べてみると実は建てられる、という可能性も残されています。
市街化調整区域で原則建てられない
次に多いのが、市街化調整区域(しがいかちょうせいくいき)のケースです。これは都市計画法にもとづくもので、「市街化を抑制すべき区域」、つまり街を広げないようにブレーキをかけているエリアのことです。ここでは原則として、建物の新築・増改築・用途変更が認められていません。
ただし都市計画法第34条には、農林漁業用の建物や、地域に最小限必要と認められる施設など、例外的に許可される類型がいくつも定められています。「線引き前から建っていた家の建て替え」が一定の条件で認められることもあります。ここも「絶対に何もできない」と決めつけず、自治体の開発指導の窓口に確認する価値があります。
借地・農地など、所有や用途に縛りがある
このほか、土地そのものが借地(自分のものは建物だけで、土地は地主から借りている)だったり、農地で勝手に宅地に転用できなかったり、といったパターンもあります。借地なら地主との交渉、農地なら農地法の転用許可と、それぞれ別のルートになります。
「建てられない理由」は、市街化調整区域・再建築不可・借地・農地などさまざま。まずは役所(建築指導課・開発指導課)や法務局で、自分の土地がどのタイプかを確定させること。これが、その後の打ち手をすべて決めます。
「0円でも売れない」は本当?まず疑うべきこと
結論は、一社の不動産屋に言われただけで諦めるのは早い、ということです。
理由はシンプルで、不動産会社にも得意・不得意があるからです。大手の仲介会社は、住宅ローンが通りやすい一般的な物件をスピーディに回すのが得意で、再建築不可や調整区域のような「手間がかかる土地」は、そこまで力を入れてくれないことがあります。「うちでは扱えません=この世のどこでも売れません」ではないんです。
地場の不動産屋ほど「抜け道」と「買い手」を知っている
私が現場で見てきた範囲でも、その土地のすぐ近くで長くやっている地場(じば)の業者ほど、地元ならではの抜け道や、地元の買い手を知っていることが多いです。たとえば「隣の家がずっと土地を広げたがっている」「あの工務店が資材置き場を探している」といった、ネットには出てこない情報を持っていたりします。
だからまず、立地を担当エリアにしている地元の不動産会社を、できれば複数当たってみる。これだけで「売れない」が「条件次第で動かせる」に変わることは、めずらしくありません。
「訳あり物件」専門の買取業者という選択肢
もう一つ、近年は再建築不可や調整区域などの「訳あり物件」を専門に買い取る業者も増えてきました。一般の市場では値がつきにくい土地でも、リフォームや別用途での活用ノウハウを持っているため、買い取ってくれる場合があります。
ただし、専門業者は買い叩かれるリスクもあります。一社だけの提示額をうのみにせず、複数社に査定を出してもらい、金額と条件を見比べてから決めるのが安全です。「手間でも数社に当たる」——これが、損をしないための基本動作です。
「囲い込み」されない売り方を選ぶと、買い手に出会いやすい
もう一つ知っておいてほしいのが、「囲い込み(かこいこみ)」という業界の慣行です。仲介会社が売り手・買い手の両方から手数料を取りたいために、預かった物件をほかの会社に紹介せず、自社の中だけで抱え込んでしまうことがあります。こうなると物件が広く露出せず、本来出会えたはずの買い手とマッチングできません。これも、売り手が損をしやすい情報格差の一つです。
とくに相続した家や住み替えで「売れる物件」を手放したいなら、囲い込みをせず、各ポータルサイトに広く出してくれる仲介を選ぶだけで、結果が変わることがあります。
相続・住み替えで「家を売る」なら、売り方で結果は変わります
不動産売却サービスの「ミライアス(スマート仲介)」は、この「囲い込みをしない」スタンスの仲介です。担当は宅建士で、物件を自社で抱え込まず各不動産ポータルに広く掲載してマッチングの間口を広げ、オンライン内見にも対応。査定や相談は無料で、相続や住み替えにともなう売却にも向いています(対応エリアは東京・神奈川・埼玉・千葉)。
「一社に断られた」「なんとなく任せた一社が動いてくれない」と感じているなら、こうした売り方の違う会社にも査定を出して比べてみる価値があります。まずは無料査定で、自分の物件がいくらで・どう売られるのかを見てみてください。
※ こうした仲介サービスは、市場で「売れる」居住用不動産を前提としたものです。再建築不可の更地そのものなど、そもそも一般の市場で売りにくい土地は、この記事の後半で紹介する別ルート(隣地への打診・国庫帰属制度など)のほうが現実的な場合があります。
売る以外にもある「手放す・活かす」4つの選択肢
結論として、「市場でふつうに売る」以外にも、手放したり活かしたりするルートはいくつもあります。売却にこだわりすぎると、かえって手詰まりに見えてしまうんです。現実的なものから順に4つ紹介します。
建てられない土地でも、隣地の持ち主にとっては「自分の敷地を広げる絶好のチャンス」になることがあります。庭を広げたい、駐車場を増やしたい、というニーズは意外と多いんです。接道義務を満たさない土地でも、隣の土地とくっつければ条件をクリアできる、というケースもあります。再建築不可の土地が動くきっかけとして、もっとも現実的なのが「隣への打診」です。
市区町村が運営する「空き家・空き地バンク」に登録すれば、移住希望者やDIY好きの買い手とマッチングできることがあります。また、自治体への寄付を打診する手もあります。ただし自治体は「公共で使う見込みのない土地」は受け取らないことが多いので、過度な期待は禁物。あくまで「当たってみる先の一つ」として考えてください。
建物が建てられなくても、「貸す」なら活用できることがあります。家庭菜園や農地として、あるいは近隣の工務店・建設会社に資材置き場として貸すなど。賃料は大きくなくても、固定資産税の負担を相殺できれば、持ち続ける痛みはぐっと軽くなります。「売れない=価値ゼロ」ではなく、「使い道はある」と発想を切り替えるのがコツです。
先ほども触れた、再建築不可・調整区域などを専門に扱う買取業者です。一般市場で値がつかない土地でも引き取ってくれる可能性がありますが、買取価格は低めになりがち。必ず複数社に査定を依頼し、条件を比較してから判断してください。
この4つは、いずれも「一通り当たってみる価値あり」です。一つがダメでも、別のルートで動くことはよくあります。
【2023年開始】土地を国に返せる「相続土地国庫帰属制度」
ここがこの記事でいちばん知ってほしいところです。結論からいうと、相続した土地なら、一定の条件を満たせば「国に引き取ってもらう」ことができます。これが2023年4月にスタートした「相続土地国庫帰属制度(そうぞくとちこっこきぞくせいど)」です。
この制度は、相続等土地国庫帰属法(令和3年法律第25号)にもとづいて運用されています。背景には、相続したものの使い道がなく、放置されて所有者不明になっていく土地が全国で増えている、という社会問題があります。「いらない土地を次の世代に残したくない」という相続人のために用意された、比較的新しい仕組みです。
使えるのは「相続・遺贈で取得した土地」だけ
申請できるのは、相続または遺贈によって土地を取得した人に限られます。自分で買った土地や、生前に贈与で受け取った土地は対象外です。今回のような「祖母が住んでいた土地を相続する(しようとしている)」ケースは、この制度の対象になり得ます。
費用は「審査手数料」+「負担金」
気になるお金の話です。費用は2種類あります。
| 費用の種類 | 金額の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 審査手数料 | 土地1筆あたり 14,000円 | 不承認・却下でも返還されない |
| 負担金 | 原則 20万円程度 (地目・面積で変動) | 承認後に納付。10年分の管理費用相当額として算定される |
負担金は、国が代わりに管理することになる10年分の標準的な費用を考慮して計算されます。多くのケースで20万円程度ですが、土地の種類(宅地・田畑・山林など)や面積によって変わります。負担金を納めた時点で、土地の所有権が国に移ります。
注意:建物が建っている土地は「そのままでは」申請できない
この制度は「建物がない更地」が条件です。建物が建ったままでは申請できません。今回のご相談のように家が建っているなら、申請するには原則として建物を解体し、更地にする必要があります。ほかにも、境界がはっきりしない土地、土壌汚染がある土地、崖地、管理に過度な費用がかかる土地などは、引き取ってもらえない(却下される)可能性が高いです。
つまり「家を壊す解体費用」と「審査手数料+負担金」を足して、それでも固定資産税を払い続けるより得か——という計算になります。ここはFP目線で、しっかりシミュレーションしてから動くのが大事です。
実際にどれくらい使われている?
「新しい制度って、本当に機能してるの?」と思いますよね。法務省の統計によると、制度開始(2023年4月)から約3年の2026年3月時点で、申請は累計5,000件を超え、実際に国に引き取られた土地も2,500件を超えています。月あたり100件前後のペースで承認が積み上がっており、利用は着実に広がっています。決して「絵に描いた餅」ではありません。
「最後は相続放棄するしかない」と言われたとのことですが、その前に「相続土地国庫帰属制度が使えないか」を検討する価値があります。放棄と違って、この制度は「いらない土地だけ」を手放せるのが大きな違い(次の章で説明します)。建物の解体費とのバランスを見て、現実的かどうかを法務局に相談してみてください。
そもそも、こういう土地を「引き受けないため」に
こうした「売れない土地」の悩みは、たどると「買うとき・相続するときに、接道義務や用途地域を知らなかった」ことから始まっているケースがほとんどです。自宅であれ相続不動産であれ、不動産は、買った(受け取った)瞬間に売れるかどうかがほぼ決まる、立派な投資です。知らずに高くつかんでしまったら、後からどう頑張っても取り返すのは難しい。逆に言えば、最初に知識があれば、こうした“負動産”を引き受けずに済みます。
不動産の知識を体系的に学べる場として、ファイナンシャルアカデミーの不動産投資スクールには無料体験会があります。無料で、無理な勧誘もなく、まずは話を聞くだけでもOK。私自身が20年以上前にここで学び、その後の不動産取引(自宅購入を含む)で大きな失敗を避けられた実感があります。不動産は気軽に買うものではありませんが、この体験受講のほうは、気軽に受けてみてください。
※ 受講料はかかりますが、不動産で数百万〜数千万円を失うリスクと比べれば、学ぶコストは決して高くありません。まずは無料体験で内容を確かめてから判断すれば十分です。
それでもダメなら相続放棄。でも誤解が多いんです
結論として、相続放棄も選択肢の一つです。ただし「放棄すれば、その土地の悩みがきれいさっぱり消える」とは限りません。ここは誤解が多いので、正確に押さえておきましょう。
相続放棄は「プラスの財産も全部」捨てること
相続放棄は、民法第915条により、自分のために相続が始まったことを知った時から原則3か月以内に、家庭裁判所で手続きする必要があります。そして大事なのは、放棄すると、いらない土地だけでなく、預貯金などプラスの財産もすべて相続できなくなるということ。「この土地だけ要らない」という選び方はできません。だからこそ、その土地以外にめぼしい財産があるなら、放棄は慎重に判断すべきなんです。
放棄しても「管理義務」が残ることがある(2023年に法改正)
もう一つの誤解が「放棄したら、もう何の責任もない」という思い込みです。ここは2023年4月施行の民法改正(第940条)で整理されました。
改正後は、相続放棄をした人が義務を負うのは、放棄の時点でその財産を「現に占有している」場合に限られます。たとえば、その家に自分が住んでいた、建物を管理していた、という場合は、次の相続人や相続財産清算人へ引き渡すまでの間、「保存義務(財産を壊したり失わせたりしない最低限の義務)」が残ります。一方、遠方にあって自分が一切関わっていない空き家であれば、放棄後に管理義務を負うことは基本的にありません。
全員が相続放棄すると、その土地は宙に浮きます。きちんと国などに帰属させるには、家庭裁判所で相続財産清算人を選任する手続きが必要になり、その費用(予納金)として数十万〜100万円ほどがかかることもあります。「放棄=タダで終わり」ではない点には注意してください。
こうした損得・手続きの判断は、個別事情で大きく変わります。相続放棄を本気で検討するなら、必ず司法書士や弁護士に相談してから決めてください。3か月の期限もあるので、早めの相談が安心です。
結局どう動けばいい?タイプ別の進め方
情報が多くて迷いますよね。最後に、「まず何から手をつければいいか」を順番に整理します。この流れで動けば、抜け漏れなく当たれます。
- 1土地のタイプを確定する。役所(建築指導課・開発指導課)や法務局で、再建築不可なのか、市街化調整区域なのか、借地・農地なのかを確認。43条の認定・許可で建てられる可能性がないかも併せて聞く。
- 2地場の不動産会社を複数当たる+訳あり物件の買取業者にも査定を依頼。一社の「売れない」をうのみにしない。
- 3隣地の持ち主に打診する。もっとも現実的な売り先・引き取り先。
- 4自治体の空き家バンク・寄付、貸し出し(農地・資材置き場)も検討。「売る」以外で固定資産税の負担を相殺できないか考える。
- 5相続した土地なら、相続土地国庫帰属制度を法務局に相談。建物解体費+審査手数料+負担金と、持ち続けるコストを比較。
- 6どうしても手放せない場合、相続放棄を司法書士・弁護士に相談。他の財産との兼ね合いと3か月期限に注意。
上から下へ、当たれる先を一つずつ潰していく。相続放棄は最後の手段であって、最初の答えではありません。1〜5を全部やってからでも遅くないんです。
まとめ:諦める前に、当たれる先は全部当たる
「家が建てられない土地だから、0円でも売れない」——確かにハードルの高い土地ではあります。でも、一社の言葉だけで「打つ手なし」と決めつけるのは、本当にもったいないです。
大事なことをもう一度。まず土地のタイプを確定させること。そのうえで、地場の不動産会社や訳あり買取業者に複数当たり、隣地への打診、自治体や貸し出し、そして相続した土地なら2023年に始まった相続土地国庫帰属制度まで。相続放棄は、それらを試したあとの最後の選択肢です。
不動産は、情報を持っている人とそうでない人とで、結果がまるで変わってしまう世界です。「うちの土地は無理だ」と思い込む前に、この記事の順番で一つずつ当たってみてください。重い荷物を、固定資産税の負担ごと下ろせる道が、きっと見つかります。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的・税務的アドバイスではありません。制度の要件・費用・運用は地域や時期によって異なり、改正される場合があります。実際の手続きにあたっては、土地の所在地を管轄する法務局・自治体の窓口や、司法書士・弁護士・税理士などの専門家に必ずご確認ください。掲載している統計・数値は記事執筆時点のものです。
宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)保有。今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代や不動産投資の失敗も含めたリアルな体験と、日々データと格闘するエンジニア目線の両方から「不動産ゼロからナビ」を運営。4人家族、地方在住。「難しそう」を「なんとかなる」に変える情報を発信中。