自宅を競売で買うのは危険?内覧不可・保証なしの現実と、賢い買い方
「ポータルサイトも不動産屋のチラシも、どれを見ても割高に感じる…」。マイホームを探しはじめると、こう思う方はめちゃくちゃ多いです。そんななかで「競売(けいばい)ならお得に買えるらしい」と耳にして、気になっている方もいるのではないでしょうか。
先に結論をお伝えします。競売は確かに相場より安く買えることがあります。でも「安く見えるだけ」で、素人が自宅用に手を出すのはかなり危険です。安さには、ちゃんと理由があるんです。
私は宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)を持ち、今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発しています。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代の現場経験と、データと向き合うエンジニア目線の両方から、この記事を書きました。じつは私自身、競売ではないものの「よく似た買い方」で痛い目を見た経験があります。
この記事を読めば、競売の仕組みと落とし穴、そして「じゃあ結局どう動けば損しないのか」がクリアになります。5分だけお付き合いください。
競売とは、住宅ローンなどを返せなくなった人の不動産を、裁判所が強制的に売りに出す手続きのことです。読み方は「けいばい」。不動産業界では、一般的な売買(任意売買)と区別するために、あえて「けいばい」と呼ぶことが多いんです。
なぜ裁判所が出てくるのか。理由はシンプルで、お金を貸した銀行などの債権者が、貸したお金を回収するための最終手段だからです。ローンが払えなくなると、担保に入っていた家や土地が差し押さえられ、地方裁判所の手続きを通じてお金に換えられます。その落札者を募集しているのが、いわゆる「競売物件」です。
ここで覚えておきたいのが「3点セット」という言葉です。これは裁判所が用意する3つの資料で、競売物件の情報源はほぼこれだけ。中身は次のとおりです。
この3点セットは、裁判所の「BIT(不動産競売物件情報サイト)」でネット公開されていて、誰でも見られます。ただし、後で詳しく書きますが、この3点セットを読み解くには、それなりの専門知識が必要なんです。ここが最初のハードルになります。
結論、競売が相場より安いのは事実です。ただ、その安さは「リスクの割引」だと思ってください。
なぜ安くなるのか。競売では、裁判所が選んだ不動産鑑定士の評価をもとに「売却基準価額」が決められます。この価額自体、市場価格より低めに設定されるのが一般的です。さらに、実際に入札できる下限ライン(買受可能価額)は、売却基準価額から20%を差し引いた金額。つまり売却基準価額の80%以上なら入札できる仕組みになっています。
買受可能価額とは、売却基準価額からその20パーセントに相当する額を控除した価額のこと。買受けの申出の額は、この価額以上でなければならない、と裁判所は説明しています。
「じゃあやっぱりお得じゃん!」と思いますよね。でも、ここで冷静になりたいんです。安いのには、内覧できない・保証がない・立ち退きが必要かもしれない、といった一般の売買では考えられないリスクが上乗せされているからなんです。
普通の中古住宅なら、宅建士が重要事項説明をしてくれて、内覧もでき、雨漏りやシロアリが見つかれば売主に責任を問える。競売は、その「守られている部分」がごっそり抜け落ちています。だから安い。ここを勘違いすると、あとで痛い出費に襲われます。次の章で、その落とし穴を1つずつ見ていきましょう。
競売の最大の問題は「守ってくれる人がいない」こと。具体的なリスクを5つに分けて解説します。ここは、この記事で一番読んでほしいところです。
落とし穴①:家の中が見られない(内覧できない)
普通の中古物件なら、当たり前のように部屋の中を見て回れますよね。競売はそれができません。判断材料は、3点セットに載っている写真と文章だけ。水回りの傷み具合、床下の状態、日当たり、においまでは、写真から読み取れません。「開けてみたら想像以上にボロボロだった」というのが、競売では日常茶飯事なんです。
落とし穴②:何かあっても、売主は責任ゼロ(民法568条4項)
これが競売で一番こわいポイントです。雨漏り・シロアリ・設備の故障といった「品質の欠陥」が後から見つかっても、売主(債務者)に文句を言えません。
根拠は民法568条4項。競売については、種類または品質に関する不適合(=一般に言う「隠れた欠陥」)について、契約の解除も、代金の減額も、損害賠償の請求も「適用しない」とはっきり定められています。普通の売買なら「契約不適合責任」で売主に修補や減額を求められますが、競売ではそれが最初から封じられているんです。
落とし穴③:住んでる人がいるかも(占有者・引渡命令)
落札しても、その家に元の所有者や別の人(占有者)が居座っているケースがあります。この場合、鍵をもらってすぐ入居…とはいきません。
もちろん法律上の対抗手段はあります。「引渡命令」(民事執行法83条)という手続きを使えば、裁判所が占有者に「出て行きなさい」と命令を出してくれます。ただし、この申立ては代金を納付した日から6か月以内にする必要があり、相手が応じなければさらに強制執行へ。時間も、弁護士費用も、精神的な消耗もかかります。子育てや仕事で忙しい共働き世帯にとって、これは相当な負担です。
落とし穴④:現金が基本、住宅ローンが組みにくい
競売は、代金納付の期限が「売却許可決定の確定から約1か月以内」とタイトです。一般的な住宅ローンは審査から融資実行まで数週間〜1か月以上かかるため、このスピードに間に合わせるのが難しい。競売専用のローンを扱う金融機関もありますが、選択肢は限られます。結局「現金で用意できる人向け」の世界になりがちで、頭金+諸費用+想定外のリフォーム代まで自己資金でまかなえるか、が現実的な壁になります。
落とし穴⑤:情報は「3点セット」だけ。自分で読み解く力がいる
3点セットには、宅建士がしてくれる重要事項説明のような「かみ砕いた解説」はありません。事実関係が淡々と書かれているだけです。
たとえば、普通なら「再建築不可(建て替えできない土地)」とハッキリ説明される物件でも、競売の資料では「幅◯メートルの道路に接する」といった事実しか書かれないことがあります。それが建築基準法の接道義務を満たさず、将来建て替えできない――という結論まで、自分の知識で読み解かないといけないんです。ここでつまずくと、「二度と建て替えられない家」を高値づかみ、なんてことも起こり得ます。
じつは私、競売ではないものの「競売にすごく近い買い方」で1つマンションを買ったことがあります。結論から言うと、リフォーム代が物件価格とほぼ同額かかりました。
その物件は、持ち主だった方が亡くなり、相続する人が誰もいなかった物件でした。こういう場合、家庭裁判所が選んだ「相続財産管理人」(2023年4月の改正民法で「相続財産清算人」に名称変更されました)という立場の弁護士さんが、遺産を整理するために売りに出します。売買契約書の売主欄には、亡くなった方の名前と、管理を担う弁護士さんの名前が並んでいました(もちろんここでは伏せます)。
安く買えたのは事実です。でも、待っていたのは想定外の出費でした。
私は宅建士でFP1級、しかも仕事で毎日不動産のデータと格闘しています。それでも「同じくらいの出費」で済ませるのがやっとでした。もし知識ゼロの状態で同じ物件を買っていたら、リフォームの見積もりで青ざめて、資金計画が破綻していたと思います。
この経験から言えるのは、こういう「割安な物件」は、購入代金だけで判断すると必ず失敗するということ。「物件価格+想定外の修繕費」までを含めて、トータルでお得かどうかを見極める目が絶対に要ります。競売も、まったく同じ構造です。
ご相談のなかで「空き家バンクも見たけど、希望のエリアが少なくてボロ物件ばかり」という声がありました。これ、よくある感想なんです。結論、空き家バンクと競売は「安い代わりに手間とリスクを引き受ける」点で似ていますが、性格はけっこう違います。整理してみましょう。
| 比較項目 | 競売 | 空き家バンク | 普通の中古売買 |
|---|---|---|---|
| 運営 | 地方裁判所 | 自治体 | 不動産会社(仲介) |
| 価格 | 相場より安めのことも | 安い〜格安(補助金あり) | 相場どおり |
| 内覧 | 原則できない | できることが多い | できる |
| 売主の責任 | なし(民法568条4項) | 個人間だと免責が多い | 契約不適合責任あり |
| 重要事項説明 | なし | 仲介が入れば あり | あり |
| 向いている人 | 知識・現金・時間がある人 | DIY・地方移住を楽しめる人 | 初めて家を買う人 |
空き家バンクは自治体が運営していて、移住支援の補助金とセットになっていることもあります。ただ、登録物件は数が限られ、傷みが進んだ家も多い。相談者さんの「希望エリアにいい物件がない」という感覚は、正直そのとおりなんです。
一方の競売は、立地の良い物件が混じっていることがある反面、内覧不可・保証なし・占有者リスクという壁が高い。どちらも「安いのには理由がある」という点は共通で、初めて自宅を買う共働き世帯にとっては、正直どちらもハードルが高いのが実情です。
結論、初めてのマイホームなら、まずは普通の中古売買で「守られた買い方」をするのが正解です。そのうえで、住宅ローンの借り方と、物件を見極める力を磨くほうが、競売に手を出すよりずっと確実にお得になります。
理由はシンプルで、普通の売買には「内覧」「重要事項説明」「契約不適合責任」という3つの安全装置があるから。競売で削られていた部分が、ちゃんと機能します。多少高く見えても、想定外の修繕費や立ち退きトラブルで数百万円飛ぶリスクを避けられるなら、トータルではむしろ安上がりなことが多いんです。
そのうえで、「本当のお得」を作るカギは、じつは物件そのものより住宅ローンの借り方にあります。
家を買うとき、物件はあれこれ時間をかけて選ぶのに、住宅ローンの借り先は「なんとなく」で決めてしまう人が意外と多いんです。でも、どの銀行で借りるかが変わるだけで、総返済額が数百万円単位で変わることもあります。競売で数十万〜数百万を値切ろうとする前に、まずこっちを見直したほうが、はるかにラクに、確実に得します。
「モゲチェック」は、入力5分・完全無料で、ネット銀行から地方銀行まで主要な金融機関の条件をまとめて比較できるサービスです。気になることは住宅ローンのプロにメッセージで相談もできます。申し込みではなく、まずは自分がどの銀行からどんな条件で借りられそうかを「見てみる」だけでもOK。(※年収や職業などの条件によっては提案が難しい場合もあります)物件選びと同じくらい、ローン選びにも目を向けてみてください。
最後に、この記事のポイントを整理します。
私自身、相続財産管理人が売主の物件で「物件価格と同じくらいのリフォーム代」を経験しました。宅建士でFP1級でも、これです。だからこそ声を大にして言いたいのは、競売や訳あり物件は「安く買えるかどうか」ではなく「トータルでいくらかかり、どんな価値の物件なのか」を見極められる人だけが手を出せる世界だということ。裏を返せば、その見極めの力さえあれば、家選びで大きく損することはなくなります。
正直に言えば、初めてのマイホームで競売はおすすめしません。でも「安く買いたい」「損したくない」という気持ちは、めちゃくちゃ正しい。その気持ちを、競売のギャンブルではなく、正しい知識に投資するほうへ向けてほしいんです。
ここまで読んで、「不動産って、知らないだけで数百万円損する世界なんだ」と感じた方も多いはずです。まさにそのとおりで、家を買うという行為は、金額の大きさで言えば立派な不動産投資と同じゲームなんです。競売でも普通の売買でも、高く買ってしまえば、あとで何をやっても取り返せません。
私はこの「自宅も投資」という考え方を、20年以上前にファイナンシャルアカデミーの不動産投資スクールで学びました。その後の13件の取引(自宅購入2件を含む)で、一度も損を出さずに来られたのは、あのとき知識に投資したからだと思っています。受講料は安くはありませんが、不動産で一度失敗したときの損失に比べれば、正直かわいいものです。
まずは無料体験を受けてみてください。話を聞くだけでOK、無理な勧誘は一切ありません。不動産は気軽に買うものではないですが、この体験受講のほうは、気軽に受けてみてほしいなと思います。
※体験は無料です。受講の判断は、話を聞いてから決めれば大丈夫です。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。競売物件の購入・入札にあたっては、必ず最新の3点セットをご確認のうえ、弁護士・司法書士・宅地建物取引士など専門家にご相談ください。制度や運用は改正・変更される場合があります。最終的な判断はご自身の責任でお願いいたします。
宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)保有。今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代や不動産投資の失敗も含めたリアルな体験と、日々データと格闘するエンジニア目線の両方から「不動産ゼロからナビ」を運営。4人家族、地方在住。「難しそう」を「なんとかなる」に変える情報を発信中。