「三為(さんため)で買ったって言われたけど、それって何?」「なんか最近、三為業者って言葉をよく聞くんだけど…」——そんな声をよく聞くようになりました。実際、知人が三為業者と競合して投資用マンションを購入した、という話も珍しくない時代です。

結論から言うと、三為契約は合法ですが、「知っているかどうか」で何百万円も損得が分かれる取引形態です。仕組みを理解しないまま契約すると、相場より高く買わされても気づけない可能性があります。

私は宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)を持ち、今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発しています。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代のリアルな現場経験と、日々データと向き合うエンジニア目線、その両方からこの記事を書きました。

この記事を読めば、三為契約の仕組み・メリット・デメリット、そして「これは三為では?」と気づくポイントまで、業者目線も含めてすべてわかります。不動産を買う・売る予定がある方は、ぜひ最後まで読んでください。

🏷️ そもそも三為契約って何?普通の売買と何が違うの?

「三為」とは、「第三者のためにする契約(民法537条)」を不動産売買に応用したものです。読み方は「さんため」。三為業者と呼ばれる不動産会社が間に入り、売主→業者→買主という3者の取引を成立させます。

ただし、ふつうの仲介とは根本的に違います。一番のポイントは「業者は仲介ではなく、売主でもあり買主でもある」という点です。

普通の仲介取引と三為契約の取引フロー

まず、普通の仲介をイメージしてみてください。売主と買主が直接契約して、不動産会社は橋渡し役として仲介手数料をもらいます。

三為の場合は全然違います。

売主 A さん
①売買契約
(第三者指定特約付き)
三為業者 B 社
②別途売買契約
(他人物売買)
買主 C さん
🏠 所有権移転登記はA→Cへ直接!(B社の登記は不要)    💰 B社の利益=B→C の売値 ー A→B の仕入値(上限なし)

ポイントは2つ。①登記がA→Cに直接移転するため、B社(三為業者)の登記が省略されること。②B社の利益(売買差益)に上限がないこと。仲介手数料は法律で上限が決まっていますが、三為の場合は売却価格の設定が自由なので、業者が何割乗せるかは表に出てきません。

📜 歴史をざっくり解説|中間省略登記から三為契約が生まれた理由

三為契約は、ある「歴史的な問題」を解決するために生まれました。その歴史を知っておくと、なぜ今これが使われているのかがよくわかります。

戦後〜
バブル期
🏗️ 旧・中間省略登記が横行

不動産が飛ぶように売れた時代、業者がA→B→Cと素早く転売する際に「申請書副本」を使えば中間者Bの登記を省略できた。法務局もB社の存在を把握できず、事実上黙認状態。バブル期はこの手法で多くの業者が大きな利益を上げた。登録免許税・不動産取得税を2回払わずに済むため、コスト面でも業者に有利な仕組みだった。

2005年
(平成17)
🚫 不動産登記法の大改正で事実上禁止

新不動産登記法が施行。「登記原因証明情報」の添付が必須になり、A→B→Cという権利変動の経緯をすべて記録しなければならなくなった。これにより従来の中間省略登記は事実上できなくなった。同時に、最高裁も中間省略登記を否定する判決を出している。(最判平成22年12月16日)

2006〜07年
(平成18〜19)
💡 内閣の諮問機関が「合法的な代替手法」を認定

内閣の諮問機関「規制改革・民間開放推進会議」の第3次答申(2006年12月)で、「第三者のためにする契約(三為契約)」と「買主の地位の譲渡」という2種類の手法が法務省によって公認。2007年1月に法務省民事第二課長通知(民二第52号)として全国の法務局に通達された。これが「新・中間省略登記」として現在に至る。

2010年代〜
現在
📈 三為業者が急増。ワンルーム投資に普及

不動産市場の価格上昇、ローン規制の変化とともに、三為業者によるワンルームマンション・投資用物件の販売が急増。「仲介手数料ゼロ」を謳った物件が増え、個人投資家・購入者が関与する機会も増えている。

⚠️ バブル期の「中間省略登記」と今の「三為契約」は別物です バブル期に横行した旧・中間省略登記は、実態として脱法行為の側面がありました。現在の三為契約(新・中間省略登記)は法務省が公認した合法的な手法です。ただし「抜け道を合法化した」という経緯があるため、買主保護の観点から注意が必要なことは変わりません。

💼 業者が三為を使う理由、全部話します

元飛び込み営業マンとして言わせてもらうと、三為が業者にとって非常に使い勝手がいい理由は3つです。

① 利益に上限がない

通常の仲介手数料は法律で上限が決まっています。例えば3,000万円の物件なら最大96万円(税別)。しかし三為の場合、業者の利益は「仕入れ価格と販売価格の差額」なので、法的な上限がありません。2〜3割上乗せして売っても違法ではないのです。

📊 三為における価格の流れのイメージ(例:相場2,500万円の物件)

仕入値
1,800万円(A→B)
相場価格
2,500万円
販売価格
2,900万円(B→C)
▲ 買主Cは相場より400万円高く買わされる可能性がある。しかも買主は仕入値(1,800万円)を知ることができない。

② 登録免許税・不動産取得税が1回分で済む

通常のA→B→Cの転売では、AからBへの所有権移転、BからCへの所有権移転と2回登記が必要です。登録免許税も2回分、不動産取得税も原則B社に課税されます。三為なら登記が1回(A→C直接)なので、業者は登録免許税・不動産取得税を丸ごと節約できます。これが業者のコスト削減に大きく貢献します。

③ 在庫リスクを持たなくていい

通常の買取再販であれば、物件を一旦自社で所有するリスクを負います。売れない期間のローン負担、管理コスト、市場価格の下落リスク——どれも業者にとっては重荷です。三為であれば、売主から物件を買う前に買主が決まっていれば(またはほぼ決まっていれば)、在庫を抱えずに転売利益だけ得られます。資金効率が極めて高いビジネスモデルなのです。

こう聞くと「それじゃあ業者ばかり得をして、売主も買主も損するじゃないか」と思いますよね。次のセクションでは、売主・買主それぞれの立場から見たメリット・デメリットを整理します。

⚖️ 売主・買主それぞれのメリット・デメリット

三為は「業者だけが得をする」ように見えますが、実は売主・買主にもそれぞれメリットがあります。問題は、そのメリットが「帳消し」になるほどのデメリットが隠れていることが多い点です。

売主(Aさん)の視点

✅ 売主のメリット

  • 💰 仲介手数料が不要(業者に直接売るため)
  • 迅速に売却できる(業者がすでに買主を持っていることが多い)
  • 🛡️ 契約不適合責任の負担が業者(B社)に移行することがある

⚠️ 売主のデメリット

  • 📉 買主(C)への販売価格を知ることができない
  • 💸 相場より安く買い叩かれるリスクがある
  • 自分の売却価格が適正かどうか判断が難しい

売主にとって最大のリスクは「転売益を知れない」点です。例えば1,800万円で売ったが、業者が2,900万円で転売していたとしても売主には一切わかりません。「仲介手数料が節約できた」と思っていても、相場より数百万円安く売っていれば本末転倒です。

買主(Cさん)の視点

✅ 買主のメリット

  • 💰 仲介手数料が不要(業者から直接買うため)
  • 🛡️ 宅建業法上、業者(B社)が売主として契約不適合責任を負う(2年以上)
  • 🏦 ローン審査が通りやすいことがある(業者が売主のため妥当性が担保される)
  • 💵 フルローン・オーバーローンが利用できるケースも

⚠️ 買主のデメリット

  • 📈 業者の仕入値を知ることができず、相場より高く買わされるリスク
  • 🔍 通常の仲介では見られないREINS公開情報が見えにくい
  • 📝 契約書類が多く、内容把握が難しい
  • 🏦 一部の金融機関では三為案件のローンが通らないことも

立場別まとめ表

項目 売主(A) 三為業者(B) 買主(C)
仲介手数料 ✅ 不要 ✅ 不要(差益が利益) ✅ 不要
相手方の売買価格 ❌ 知れない ✅ 両方知っている ❌ 知れない
登録免許税 通常通り ✅ 節約(登記なし) 通常通り
不動産取得税 対象外 ✅ 非課税(所有権なし) 通常通り
契約不適合責任 B社へ負う可能性あり ⚠️ C社への責任あり(宅建業法40条) ✅ B社へ追及可能
価格の適正性 ⚠️ 判断困難 設定自由 ⚠️ 相場比較が必要

不動産の売買は「感覚」でやってはいけない取引です。三為のような仕組みを理解できるかどうか、相場を見抜けるかどうかで、何百万円もの差がつきます。

自宅の購入も、投資用物件の購入も、本質的には同じゲームです。知識のある人間が得をして、知らない人間が損をする——それだけの話です。私が13件の不動産取引(自宅購入2件含む)で損失を出さずに来られたのは、体系的な知識があったからだと断言できます。

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🔍 「これは三為?」見分け方チェックリスト

三為業者かどうかは、いくつかのサインで見分けられます。売主・買主どちらの立場でも使えるチェックリストです。

🚨 三為取引の可能性が高いサイン

  • 「仲介手数料無料」を強調している
  • 契約書に「第三者のためにする契約」という文言がある
  • 売主と買主の間に不動産会社が「売主」として入っている
  • REINSに物件情報が公開されていない(または公開期間が短い)
  • 「買主はすでに決まっています」と言われた(売主側の場合)
  • 物件の所有権がA→Cに直接移転する旨の特約がある
  • 登記簿謄本(登記事項証明書)に業者名が出てこない取引
  • 「他人物売買」に関する説明がある
💡 登記簿で確認する方法 三為取引後の登記簿には、B社(三為業者)の名前は登場しません。直前の所有者(売主A)から直接、買主Cへの移転登記になります。もし「なぜ前々オーナーの登記が省略されているのか?」と疑問に思ったら、三為取引を疑ってください。法務局またはオンラインで登記事項証明書(取得費用:1通600円程度)を確認できます。

🛡️ 三為契約の注意点と、やっておくべき自衛策

三為自体は違法ではありません。ただし、構造上「情報格差」が生まれやすく、知識のない側が損をしやすい取引形態です。ここでは具体的な自衛策を紹介します。

売主側の自衛策

  • 相場を先に調べる|国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で近隣の取引価格を事前に確認する(2024年4月より土地総合情報システムから移行した公式サービス)
  • 複数業者から査定を取る|三為業者1社だけに頼らず、一般仲介の業者にも査定を依頼して比較する
  • 「買主への販売価格を教えてほしい」と交渉する|法的な義務はないが、正直な業者なら教えてくれる。教えない場合は「なぜ?」と疑ってよい
  • 契約書の特約を細かく確認する|「第三者のためにする契約」の条項が何を意味するか、司法書士や弁護士に相談することも視野に

買主側の自衛策

  • REINSや不動産ポータルサイトで相場を徹底調査|同エリア・同条件の物件の相場を把握してから交渉に臨む
  • AIや不動産価格査定ツールを活用する|近年は成約価格データをもとにした査定ツールが充実。「この価格は適正か」を客観的に確認
  • 契約不適合責任の期間を確認する|宅建業法40条により、業者が売主の場合は最低2年間の担保責任期間が保証される。これを短縮する特約は買主に不利なため無効
  • 住宅ローン審査の前に、利用可能な金融機関を確認|三為案件は一部の金融機関で審査が厳しくなる場合あり。事前に複数行に相談を
  • 「仲介手数料ゼロ」に惑わされない|仲介手数料の節約額より、相場より高く買わされた差額の方がはるかに大きい可能性がある

中間省略登記(旧)との混同に注意

「三為は中間省略登記と同じでは?」と思う方もいますが、法的には別物です。

比較項目 旧・中間省略登記 三為契約(新・中間省略登記)
現在の合法性 ❌ 事実上禁止(2005年〜) ✅ 法務省公認(2007年〜)
所有権の移転 A→B→Cと実際には移転するが登記省略 実体法上もA→Cに直接移転
法的根拠 なし(脱法行為) 民法537条・法務省民二第52号通知
買主保護 弱い 宅建業法による保護あり
バブル期との関連 バブル期に多用 バブル期には存在しない(2007年以降)

「バブルのころに流行った中間省略登記のことでしょ?」という認識は間違いです。バブル期に横行した旧・中間省略登記は現在は禁止されており、三為はその後に法的に整備された別の仕組みです。名前こそ似ていますが、法的構成がまったく違います。

📌 まとめ|三為は悪者じゃない。でも知識がないと損する

🔑 この記事のまとめ

  • 三為契約は民法537条に基づく合法的な取引形態。違法ではない
  • 旧・中間省略登記は2005年に事実上禁止。三為はその代替として2007年に法務省が公認した「別の仕組み」
  • 業者のメリットは大きい(利益上限なし・税負担軽減・在庫リスクゼロ)
  • 売主は「仕入値より高く売れた満足感」と引き換えに「相場より安く売った損失」が生じやすい
  • 買主は「仲介手数料無料」の代わりに「割高な物件価格」を払うリスクがある
  • 買主には宅建業法上の契約不適合責任(2年以上)が保護される
  • 自衛策は「相場の事前調査」「複数査定」「契約書の確認」の3点セット

三為という取引の本質は「情報の非対称性」です。業者は売主の価格も買主の価格も知っている。でも売主と買主はそれぞれ一方の価格しか知らない。この情報格差が、業者の利益の源泉になっています。

これは「ずるい」ではなく、「そういう仕組みの取引だ」と理解することが重要です。知識があれば自衛できる。知らなければ損をする。不動産取引のすべてに共通するシンプルな真実です。

自宅の購入は、不動産投資と同じゲームです。相場を知らずに買えば、何をやっても取り返せない。その覚悟なしに数千万円の買い物をしてはいけません。

私が体系的に不動産の知識を学んだのが、ファイナンシャルアカデミーの不動産投資スクールでした。「投資で稼ぐ」ためだけじゃなく、「家を買うときに絶対に損をしない」という目的で学ぶ価値があります。受講料は高額ですが、1回の不動産取引で失う損失と比べれば、コストではなく保険です。まず無料体験から。話を聞くだけでOKです。無理な勧誘は一切ありません。

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【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の法律上・税務上のアドバイスを提供するものではありません。三為契約に関する判断や取引については、宅地建物取引士・弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。記載内容は執筆時点(2025年時点)の法令・制度に基づいており、今後の法改正等により変更となる場合があります。
✍️ この記事を書いた人|ほげたろう

宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)保有。今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代や不動産投資の失敗も含めたリアルな体験と、日々データと格闘するエンジニア目線の両方から「不動産ゼロからナビ」を運営。4人家族、地方在住。「難しそう」を「なんとかなる」に変える情報を発信中。

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