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「JR佐倉駅なら、千葉駅にも東京方面にも出やすい。でも、8月の豪雨で駅の周りが水につかったニュースを見てしまった。候補から外すべきなのか、それとも気にしすぎなのか、判断がつかない」

佐倉市への住み替えを考えていて、JR佐倉駅周辺を候補に入れていた方は、今こんな状態ではないでしょうか。

先に結論を書きます。JR佐倉駅周辺は、2019年にも冠水した場所です。それでも地価は、その後の6年間で市内の住宅地の中央値を大きく上回るペースで上がりました。浸水想定区域の中の地点と外の地点を比べても、上がり方に差はありませんでした。つまり「価格が上がっている=安全な場所」とは言えず、リスクは価格とは別に自分で確かめる必要があります。

私は宅建士(2014年取得)で、今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発しています。この記事では、国の地価公示と洪水浸水想定区域、標高データを重ね合わせて、「冠水は地価に反映されてきたのか」を検証しました。

読み終えるころには、「駅に近くて便利」と「水につかりやすい」を分けて考えられるようになります。すでに住んでいる方は、次の大雨の前に何を確認しておけばいいかもわかります。

はじめに

令和8年8月千葉豪雨では、佐倉市を含む県内各地で人的被害が出ています。この記事は被害を話題にするためのものではなく、これから住まいを選ぶ人、今住んでいる人が、次の大雨に備えるための情報として書いています。

結論:JR佐倉駅周辺は冠水をくり返しても、地価が上がってきた

JR佐倉駅の周辺は、冠水したあとも地価が上がり続けてきたエリアです。これまでのところ、冠水のリスクは価格にほとんど反映されていません。

理由は、国の公的データを並べると、3つの事実がそろって出てくるからです。

見たポイントわかったこと
冠水の履歴2019年10月と2026年8月に、駅周辺で冠水が起きている
冠水後の地価2019→2026年に表町3丁目+18.5%、寺崎北3丁目+17.2%。市内住宅地の中央値は+5.8%
浸水想定区域の中と外駅から1km以内でそろえると、上がり方に差はなかった

ここから言えるのは、地価が上がっているかどうかで、水害リスクは判断できないということです。以下で、それぞれの中身を順番に見ていきます。

JR佐倉駅周辺は、なぜ水につかりやすいのか

JR佐倉駅の周辺が水につかりやすいのは、高崎川沿いの低い土地に広がっているからです。

国土地理院の標高データで地価公示の地点を調べると、駅の南側にある表町3丁目は標高5.0m、鏑木町1丁目は4.8m、寺崎北3丁目は3.6mでした。同じ佐倉市でも、志津駅周辺の地点は標高25m前後なので、20m近い差があります。

さらに、千葉県が指定している高崎川の洪水浸水想定区域(想定最大規模の降雨)を重ねると、表町3丁目と鏑木町1丁目の地点は区域の中に入っていました。想定される浸水の深さは「0.5〜3.0m未満」で、国の定義では「床上から1階が浸水」する程度です。0.5m以上の浸水が続く時間は、12〜24時間と想定されています。

ここで大事なのは、JR佐倉駅周辺の水害は、主に川があふれる「洪水」の話だということです。志津やユーカリが丘の台地で起きる「内水(下水や排水路があふれる浸水)」とは性質が違います。台地の街の内水については、ユーカリが丘のハザードマップ|洪水が白でも安心できない理由で詳しく解説しています。

ただし、駅の周辺でも用水路などから水があふれる内水は起きます。2019年の冠水を現地で取材した記事では、駅より標高の高い大崎台の交差点も冠水しており、その真下を農業用水が通っていたことが指摘されています。低い土地は、洪水と内水の両方に注意が必要です。

2019年と2026年、同じエリアで冠水がくり返された

JR佐倉駅の周辺では、2019年と2026年の2回、大規模な冠水が起きています。一度きりの出来事ではありません。

2019年10月25日の大雨

2019年10月25日の大雨では、JR佐倉駅の線路が冠水しました。当時、現地を取材した記事によれば、高崎川が国道296号と交差するベイシア電器近くの橋では、堤防は決壊しておらず、低い橋のたもとで水があふれていたとみられています。

2026年8月の豪雨

2026年8月13日の豪雨では、佐倉市によると、市内の各地で道路の冠水や住宅への浸水の報告が複数寄せられました。国土交通省の被害状況のまとめには、国道296号の佐倉市田町での冠水が載っています。

市の発表をもとにした報道によると、8月16日17時の時点で、市内の通行止めは29か所ありました。この時点で解除された4か所の中には、田町の国道296号鹿島橋付近から寺崎北のベイシア交差点までの区間が含まれ、JR佐倉駅北口駅前付近などでは通行止めが続いていました。鉄道も、8月14日の昼の時点で、JR総武本線の佐倉〜成東間は運転再開の見込みが立っていませんでした。

私自身は、危なくて現地には近づけませんでした。SNSでは、駅のホームから線路が水につかっている様子を撮った動画が多く共有されていて、テレビでも流れていたのを見て、正直衝撃を受けました。佐倉市に住んでいて、ベイシアのあたりが冠水して通行止めになったという話は、これまでに3〜4回は耳にしています。地元では「大雨のたびに気をつける場所」という認識です。

冠水のあとも、地価は上がり続けた

2019年に駅ごと冠水したにもかかわらず、JR佐倉駅周辺の地価は、その後も市内の平均を上回るペースで上がり続けました。

JR佐倉駅周辺の地価公示の推移 2019年の冠水後も市内の中央値を上回って上昇
2019年1月1日を100とした地価公示の推移。縦線は冠水が起きた時期

地価公示は毎年1月1日時点の価格です。2019年10月の冠水から約2か月後の2020年1月1日の時点で、表町3丁目は前年から+2.0%、寺崎北3丁目は+2.4%、鏑木町1丁目は+1.8%でした。同じ年、佐倉市の住宅地の中央値は横ばいです。冠水の直後でも、下がるどころか市内より上がっていたことになります。

地点標高2019→2026年
表町3丁目5.0m+18.5%
寺崎北3丁目3.6m+17.2%
鏑木町1丁目4.8m+10.7%
佐倉市の住宅地(34地点の中央値)+5.8%

人の動きも同じ方向です。佐倉市の人口は2021年8月末から2026年8月末の5年間で2.7%減りましたが、ベイシア電器がある寺崎北6丁目は+19.6%、駅前の表町1丁目は+16.7%増えていました。冠水した場所に、むしろ人が集まり続けています。

浸水想定区域の中と外で、地価に差はあったのか

浸水想定区域の中にある地点と外にある地点を比べても、地価の上がり方に目に見える差はありませんでした。

佐倉市の地価公示47地点を、高崎川の洪水浸水想定区域と重ね合わせると、区域の中に入っていたのは次の6地点でした。

地点最寄駅・距離想定浸水深2021→2026年
表町3丁目(住宅地)JR佐倉 500m0.5〜3.0m+15.2%
大崎台1丁目(商業地)JR佐倉 100m0.5m未満+13.8%
山王1丁目(住宅地)物井 450m0.5〜3.0m+11.1%
鏑木町1丁目(住宅地)JR佐倉 600m0.5〜3.0m+8.3%
山崎(住宅地)京成佐倉 700m0.5m未満+3.0%
臼井田(農地)京成臼井 1,200m0.5〜3.0m−0.7%

次に、市街化区域の住宅地だけで、区域の中と外の上昇率を比べました。

比べ方区域内の住宅地区域外の住宅地
全地点+9.7%(4地点)+5.4%(30地点)
駅から1km以内に限定+9.7%(4地点)+10.5%(13地点)

全地点で比べると区域内の方が上がって見えますが、これは区域内の地点がたまたま駅の近くに集まっているからです。駅から1km以内にそろえると、ほぼ同じになります。「駅に近い」ことは価格に効いていて、「浸水想定区域の中にある」ことは効いていなかった、というのがデータの答えです。

ただし、区域内の住宅地は4地点しかないので、「影響はゼロ」と言い切れるほどの材料ではありません。また、今回使ったデータに含まれていたのは高崎川の想定区域で、鹿島川については確認できていません。寺崎北3丁目の地点は高崎川の区域外でしたが、2026年には近くのベイシア交差点付近が通行止めになっています。区域の外だから冠水しない、とは言えないことも覚えておいてください。

なぜ冠水のリスクは価格に反映されないのか

ここからは、データではなく私の考察です。冠水のリスクが価格に表れにくい理由は、大きく3つあると考えています。

  • 駅に近い便利さの方が、評価として大きい。JR佐倉駅は、千葉駅にも東京方面にも出やすい駅です。共働き世帯にとって、毎日の通勤の便利さは、数年に一度の冠水より重く評価されやすいと考えられます。
  • 冠水を実際に経験した買主が少ない。冠水は毎年起きるものではありません。新しく引っ越してくる人の多くは、過去にその場所が水につかったことを知らないまま検討していると思われます。
  • 買主がリスクを知るのが、契約の直前になりやすい。水害ハザードマップの説明は重要事項説明で行われますが、それは契約の直前です。この点はユーカリが丘のハザードマップの記事で、実務の目線から詳しく書いています。

いずれも推測で、データで証明できるものではありません。ただ、「価格が上がっている場所は、みんながリスクを理解したうえで選んでいる」とは限らない、ということは言えそうです。

2026年の豪雨は、地価にいつ表れるのか

2026年8月の豪雨が地価にどう影響するかは、現時点の公的データではまだわかりません。公表されている地価は、どれも豪雨の前の時点のものだからです。

データ価格の時点公表時期(例年)今回の豪雨の反映
2026年地価公示2026年1月1日2026年3月されない(豪雨の前)
2026年基準地価2026年7月1日2026年9月されない(豪雨の前)
取引価格情報(2026年7〜9月)2026年7〜9月数か月後一部のみ
2027年地価公示2027年1月1日2027年3月ここで初めて反映

2019年の前例だけを見れば、今回も地価はあまり動かないかもしれません。一方で、今回は2回目の大規模な冠水で、テレビやSNSで広く共有されました。買主の見る目が変わる可能性もあります。2027年3月に公表される地価公示で、表町3丁目・寺崎北3丁目・鏑木町1丁目が市内のほかの地点と比べてどう動くかが、最初の答え合わせになります。公表されたら、この記事に追記する予定です。

住んでいる人・これから買う人が、今できること

地価が水害リスクを教えてくれない以上、リスクへの備えは自分でするしかありません。立場ごとに、今できることを整理します。

すでに住んでいる人:火災保険の水災補償を確認する

JR佐倉駅周辺のような低い土地に住んでいるなら、まず火災保険の証券を出して、水災補償が付いているかを確認してください。火災保険は名前に「火災」とついていますが、洪水や浸水による被害は、水災補償を付けていないと対象になりません。

水災補償がどこまで出るのか、自分に必要かどうかの判断のしかたは、大雨で火災保険はどこまで出る?水災補償が必要か決める4手順にまとめています。なお、保険は契約した後に起きた被害が対象になるのが一般的です。見直すなら、次の大雨の季節が来る前がおすすめです。

水災補償を付けた場合の保険料を、先に知っておく

水災補償を付けるかどうかは、保険料との兼ね合いで決めることになります。保険スクエアbang!の火災保険の無料診断なら、住まいの条件を入力して、自分の家に合った火災保険を調べられます。今の保険を解約するかどうかを決める前に、まずは水災補償を付けた場合の目安を知っておくと、判断しやすくなります。

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これから買う人:価格ではなく、場所で判断する

JR佐倉駅周辺を検討しているなら、価格が上がっていることを安心材料にしないでください。候補の物件が出てきたら、内見の前に、標高・ハザードマップ・浸水履歴を自分で確認するのが確実です。

具体的な手順は、ユーカリが丘のハザードマップの記事の「内見の前に自分でやる3ステップ」で紹介しています。佐倉市のどのエリアでも同じ手順で使えます。駅周辺の地価が佐倉市全体の中でどう動いたかは、佐倉市の地価はどこが上がった?2021〜2026年を地区別に検証で詳しく分析しています。

ここで紹介した内容は一般的な情報提供です。特定の物件や区域の安全性を保証したり否定したりするものではありません。個別の物件については、宅地建物取引業者や自治体の最新資料で確認してください。

まとめ:JR佐倉駅周辺は「便利さ」と「水害リスク」を分けて判断する

この記事のポイントを振り返ります。

  • JR佐倉駅周辺は高崎川沿いの低い土地で、2019年と2026年の2回、大規模な冠水が起きた
  • それでも地価は、2019年の冠水後も市内の中央値を上回って上がり続けた
  • 浸水想定区域の中と外で、地価の上がり方に目に見える差はなかった
  • 2026年の豪雨の影響が公的な地価に表れるのは、早くても2027年3月公表の地価公示から
  • 価格は水害リスクを教えてくれない。住んでいる人は水災補償を、買う人は場所そのものを確認する

JR佐倉駅周辺の便利さは本物です。だからこそ、「便利だから選ぶ」と「水害リスクをどう備えるか」を分けて考えれば、後悔の少ない判断ができます。次の大雨が来る前に、保険の証券を1枚確認するところから始めてみてください。

この記事のデータと分析方法

  • 地価:国土数値情報の地価公示(2026年版、各年1月1日時点)。佐倉市の47地点を使用しました。
  • 浸水想定区域:国土数値情報の洪水浸水想定区域(河川単位、2025年度版、千葉県)。想定最大規模の区域に、地価公示地点が含まれるかを判定しました。
  • 標高:国土地理院の標高データ(地価公示地点の緯度・経度から取得)。
  • 人口:佐倉市 町丁別年齢別人口データ(各年8月末時点)。

数値は筆者の集計によるもので、公的機関の公表値ではありません。浸水想定区域のデータは位置に一定の誤差を含むため、個別の物件については必ず佐倉市のハザードマップで確認してください。

📎 参考・出典

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・税務的・投資的アドバイスではありません。記載内容は2026年9月時点の情報です。浸水想定区域は今後変更される場合があり、区域に該当しないことをもって水害のリスクがないことを意味するものではありません。実際のご判断にあたっては、宅地建物取引業者・自治体の最新資料等をご確認ください。

執筆日:2026年9月11日/最終更新日:2026年9月11日
情報の時点:地価公示は2026年1月1日時点、浸水想定区域は2025年度版、人口は2026年8月末時点、被害状況は各出典の公表時点

✍️ この記事を書いた人|ほげたろう

宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)保有。今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代や不動産投資の失敗も含めたリアルな体験と、日々データと格闘するエンジニア目線の両方から「不動産ゼロからナビ」を運営。4人家族、地方在住。「難しそう」を「なんとかなる」に変える情報を発信中。

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