マンションを買うとき、間取り・駅距離・価格ばかり見ていませんか?

実はそれ、めちゃくちゃ危険です。

「管理状態の悪いマンションを買ってしまって、数年後に修繕積立金が月3万円に値上がりした」「大規模修繕ができず、外壁がボロボロのまま売りに出されている」——こんな話、不動産業界にいると本当によく耳にします。

そしてその根っこにあるのが、「総戸数」という数字なんです。

私は宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)を持ち、今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発しています。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代のリアルな現場経験と、日々データと向き合うエンジニア目線、その両方からこの記事を書きました。

この記事を読めば、「総戸数が少ないマンションがなぜリスクなのか」「修繕積立金の適正額をどう判断するか」「買っていいマンションと避けるべきマンションの見分け方」が丸ごとわかります。マンション購入前に必ず読んでおいてほしい内容です。


そもそも「総戸数」ってなに?マンション購入で重要な理由

総戸数とは、そのマンションに存在する住戸の合計数のこと。シンプルな言葉ですが、これがマンションの「経営体力」を決める根幹の数字です。

マンションは、購入したら終わりじゃないんです。建物という「共有財産」を、全住民で維持し続けなければならない。その維持コストを、何人で割り勘するか——それを決めるのが総戸数なんです。

🏢 総戸数の「規模感」をざっくりイメージ
超小規模
(〜20戸)
⚠️ 要注意
小規模
(21〜50戸)
△ 慎重に
中規模
(51〜150戸)
〇 バランス良し
大規模
(151〜500戸)
◎ 負担分散しやすい
超大規模
(501戸以上)
△ 設備次第で逆転も

※修繕積立金の一戸あたり負担の傾向イメージ。国土交通省「令和5年度マンション総合調査」をもとに作成

重要なのは、修繕積立金や管理費は「マンション全体にかかるコスト」であって、住戸数が少ないほど一人当たりの負担が重くなるという構造です。

これはもう、シンプルな割り算の話。10万円の修繕費を10人で割るのと、100人で割るのとでは、一人当たりの負担が10倍違います。

修繕積立金とは?知らないと絶対後悔する仕組み

修繕積立金とは、マンション全体の外壁・屋根・共用設備などを将来修繕するために、毎月少しずつ積み立てておくお金のこと。管理費とは別に毎月払います。

🏗️
築12〜15年ごとに「大規模修繕」が必要
外壁の塗り直し・防水工事・共用廊下の補修など。1戸あたり数十万〜100万円超の費用がかかることも。
💰
一括徴収は現実的に無理
修繕時に「1人100万円ください」と言っても払えない住民が出る。だから毎月少しずつ積み立てる。
📋
長期修繕計画に基づいて金額設定
30年先までどんな修繕が必要かを計画し、必要な総額から逆算して月々の積立額を決める。
⚠️
積立金は「返ってこない」お金
マンションを売っても修繕積立金は戻らない。共有財産の維持のために使われ続ける仕組み。
💡 国土交通省のデータでわかること

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」によると、全国の修繕積立金の平均は月13,054円/戸(駐車場使用料等からの充当額を除く)。ところが、長期修繕計画の積立額が計画に対して不足しているマンションが全体の約36.6%にのぼります。つまり、3棟に1棟以上は「修繕費が足りていない」状態なんです。

この「積立不足」が起きやすいのが、まさに総戸数が少ないマンションなんです。その理由を次のセクションで詳しく解説します。

総戸数が少ないと、なぜ「詰む」のか?リスクを徹底解説

結論から言います。総戸数が少ないマンションは、1つの問題が起きたとき、そのダメージが全員に直撃しやすい構造です。

① 修繕積立金が集まりにくい

10戸のマンションで月々1万円ずつ積み立てても、年間積立額は120万円。それを30年積み立てても3,600万円。でも、中規模マンション1棟の大規模修繕には数千万〜数億円かかることもあります。戸数が少ないと、それだけ1人当たりの負担が重くなる。

💰 同じ建物規模でも、総戸数で月負担がこんなに違う(試算)
⚠️ 小規模マンション
9階建て・1フロア2世帯
総戸数:18戸
大規模修繕費用(想定)4,500万円
積立期間15年(180ヶ月)
1戸あたり月額約13,888円
✅ 中規模マンション
9階建て・1フロア4世帯
総戸数:36戸
大規模修繕費用(想定)4,800万円
積立期間15年(180ヶ月)
1戸あたり月額約7,407円

※同じ階数でも戸数2倍なら負担はほぼ半分。建物の修繕費は「高さ」に比例するため、階数が同じなら費用もほぼ同等になる。試算はあくまでイメージです。

② 「管理丸投げ」「滞納」が起きると致命的

マンションの区分所有者の中には、投資目的で買っていて一度も来たことがない人もいます。そういう人は管理組合への参加意欲が低く、修繕積立金の滞納も起きやすい。

⛔ 総戸数20戸のマンションで起きる最悪シナリオ

20戸のうち5戸が投資目的のオーナーで管理丸投げ、2戸が修繕積立金を3ヶ月以上滞納——。たったこれだけで、管理組合は機能不全に陥ります。

国土交通省の調査では、修繕積立金を3ヶ月以上滞納している住戸があるマンションは全体の30.1%。総戸数が少なければ少ないほど、1戸の滞納が全体に与えるダメージは大きくなります。

③ 管理組合の機能が弱くなりやすい

マンションの維持管理は「管理組合」が担います。でも総戸数が少ないと、役員になれる人が限られ、理事の成り手不足が深刻化。管理会社に丸投げになったり、長期修繕計画すら作れていなかったりするケースが出てきます。

チェック項目 総戸数 少(〜30戸) 総戸数 多(100戸以上)
1戸あたりの修繕費負担 重い 分散される
滞納1件の影響 大きい 吸収しやすい
管理組合の機能 役員不足になりやすい 安定しやすい
積立不足リスク 高い 低い傾向
大規模修繕の実施力 遅れやすい 計画通り進めやすい

【実例】「これは他人事じゃない」——東京・足立区の9階建て28戸マンションで起きたこと

「総戸数が少ないと詰む」——正直、言葉だけだとピンとこない人も多いと思います。だから、実際に起きた話を紹介します。

東京都足立区にある「レクセルガーデン北綾瀬」。鉄筋コンクリート造の9階建て、総戸数28戸の小規模マンションです(2008年竣工)。

📰 実際に起きた話
東京都足立区「レクセルガーデン北綾瀬」
RC造9階建て・総戸数28戸・2008年竣工
2008年
🏢 竣工・入居開始
修繕積立金は「段階増額積立方式」を採用。最初の月額は1戸あたり平均6,051円/月(㎡あたり約80円)という安い設定でスタート。3年ごとに増額される計画だった。
〜2016年
⚠️ 8年間、一度も値上げされず
管理会社から増額の助言があったにもかかわらず、合意形成の難しさから問題が先送りされ続けた。総戸数28戸という規模では、役員の入れ替わりや合意形成のハードルが特に高い。
2016年
🚨 理事でもない住民が決算資料を自主チェック→不足発覚
当時理事でもなかった後藤謙治さんが決算資料を確認。竣工12年目に予定していた1回目の大規模修繕に向けて修繕積立金が2,000万円不足していることが判明。
〜2021年
💪 5年かけて住民説得・抜本的な計画見直し
後藤さんが理事長に就任し、仕事・子育てと並行しながら5年間かけて情報収集、コンサルタントへの相談、住民への説明を繰り返した。「段階増額方式」から「均等積立方式」に変更し、修繕周期も12年→15年に長期化。修繕積立金を3.5倍に引き上げ、不足分は融資で対応。
2022年
✅ 1回目の大規模修繕を無事完了
現在の修繕積立金は㎡あたり月281円で安定。国土交通省ガイドラインの目安(252〜335円)の範囲内に収まっている。管理状況の評価は25点中24点と高評価を獲得。
💡 この事例から読み取れる「小規模マンションのリスク構造」

このマンション、9階建てで28戸という「縦は高いのに総戸数が少ない」典型的なケースです。修繕積立金が㎡あたり80円という低設定でスタートし、合意形成の難しさから8年間値上げされなかった。もし後藤さんが気づかなければ、大規模修繕ができないまま建物の劣化が進み、売りたくても売れない状態になっていた可能性があります。

「幸いハッピーエンドで終わった」のは、たった一人の住民の行動があったから。あなたが買おうとしているマンションには、その「一人」がいますか?

⛔ この事例で見逃せないポイント

月6,051円(㎡あたり80円)の修繕積立金は、国土交通省ガイドラインの目安(小規模マンションで㎡あたり335円)のわずか24%しかありませんでした。

これは極端なケースに見えますが、実は珍しくない。国土交通省の調査では2020年以降に竣工した新築マンションの9割近くが段階増額方式を採用しており、その多くが当初設定を低く抑えています。中古で購入する場合も、この「当初の安い設定がそのまま放置されていないか」を必ず確認してください。

修繕費は「縦にかかる」——高さと総戸数の関係、知ってますか?

ここが、ほとんどの人が知らない重要ポイントです。

マンションの修繕費は「縦(高さ)」に比例してかかります。

なぜかというと、外壁の塗り直しや防水工事のためには足場を組む必要があるから。9階建てのマンションに足場を組む費用は、フロアあたりの世帯数に関係なく、ほぼ同じだけかかります。高所作業費も然り。

🏗️ 同じ9階建て、でも総戸数が違うと……
⚠️ 1フロア2世帯タイプ
18
戸(9階×2世帯)
足場代・高所作業費は同じ。でも割り勘する人数が少ない → 1人当たりの負担が重い
✅ 1フロア4世帯タイプ
36
戸(9階×4世帯)
足場代・高所作業費はほぼ同じ。割り勘する人が2倍 → 1人当たりの負担が半分

つまり、同じ高さのマンションを選ぶなら、総戸数が多いほうが圧倒的にお得。これが現場で実感してきたリアルな「総戸数の法則」です。

逆に、超高層マンション(20階以上)は、特殊な足場が必要だったり、共用部分が豪華だったりして、戸数が多くても1戸あたりの修繕費が高くなることがあります。これも国土交通省のガイドラインで確認できるポイントです。

🔍 「縦に高いのに総戸数が少ない」マンションは要チェック

10階建てなのに総戸数が20戸以下……というマンションは、修繕費の構造的な不利が重なっています。物件情報を見るときは「階数」と「総戸数」を同時に確認して、フロアあたりの世帯数を計算してみてください。

修繕積立金の適正額、実はこう見ればわかる

「うちのマンションの修繕積立金、高すぎる?安すぎる?」——これ、実は国が目安を公開しています。

国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和3年9月改訂・令和6年6月改定)では、専有面積㎡あたりの月額単価の目安が示されています。

📊 国土交通省ガイドライン:修繕積立金の目安(㎡あたり月額)
20階未満
延床5,000㎡未満
(小規模)
335
円/㎡・月(平均値)
20階未満
5,000〜10,000㎡
(中規模)
252
円/㎡・月(平均値)
20階未満
10,000〜20,000㎡
(大規模)
271
円/㎡・月(平均値)
20階未満
20,000㎡以上
(超大規模)
255
円/㎡・月(平均値)
20階以上
(タワーマンション)
338
円/㎡・月(平均値)

出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和3年9月改訂)| 機械式駐車場の費用は別途加算。あくまで目安であり個々のマンションによって異なる。

自分で計算してみよう:適正額チェック

計算式はシンプル。専有面積(㎡)× ㎡あたりの目安単価 = 月々の適正な修繕積立金の目安です。

例えば、70㎡の部屋を「20階未満・中規模(延床5,000〜10,000㎡)」のマンションで購入した場合:

🧮 70㎡のお部屋・中規模マンションの場合
📌 計算式
70㎡ × 252円 =
17,640円/月
これが「ちゃんと積み立てている」目安
⚠️ 危険なパターン
新築時の修繕積立金が
月5,000〜6,000円だったら?
将来の値上げほぼ確定。購入から10〜15年後に「月2〜3万円に値上がります」の通知が届くことに。
🚨 「段階増額積立方式」には要注意

新築マンションは売りやすくするために、当初の修繕積立金を安く設定する「段階増額積立方式」を採用しているケースがほとんどです。

2024年2月の国土交通省のガイドラインでは、段階増額の上限が「当初額の最大1.8倍まで」とされました。つまり、月5,000円で始まっても最終的に月9,000円になる可能性がある、ということ。購入時に長期修繕計画を必ず確認してください。

「安すぎる修繕積立金」は将来の爆弾

不動産の現場にいると、新築時に月額3,000円〜5,000円に設定されているマンションを見ることがあります。「安い!」と喜んでいると……築10年を過ぎた頃に修繕積立金の大幅値上げが来ます。しかも、区分所有者全員の合意が取れず値上げできないまま、修繕が後ろ倒しになっているケースも珍しくないんです。

📣 「知識があるかどうか」で、マンション購入の結果は天と地ほど変わります。

私自身、飛び込み営業時代に管理が崩壊したマンションを何件も見てきました。修繕積立金が底をつき、大規模修繕も滞り、売りたくても売れない——そんな物件を生み出したのは、知識のなさでした。

自宅購入も、れっきとした不動産投資です。投資として考えるなら、正しい知識は必須。私が20年以上前に受講し、その後13件の不動産取引すべてで利益を出す基礎になったのがファイナンシャルアカデミーの不動産投資スクールです。

買っていいマンション・避けるべきマンション チェックリスト

ここまでの内容を踏まえ、実際にマンションを見るときにチェックしてほしい項目をまとめました。内覧や重要事項説明の前に確認してください。

✅ 買ってもOK!安心マンションのチェックポイント
🏢総戸数50戸以上が目安。できれば100戸前後あると1戸あたりの負担が安定しやすい
📄長期修繕計画(30年以上)が作成されている。管理組合が受け取れるよう確認可能
💰修繕積立金の㎡単価が200円〜350円程度。国土交通省ガイドラインの目安範囲内かチェック
📈修繕積立金の積立残高が計画に対して不足していない。重要事項説明書の「管理の状況」欄で確認
🔧大規模修繕が計画通り実施されている履歴がある。過去の修繕記録を確認
👥管理組合が機能しており、議事録がある。総会の議事録を見せてもらえれば運営状況がわかる
📊均等積立方式を採用している。段階増額の場合は将来の積立金スケジュールを確認
❌ こんなマンションは要注意!NGサインリスト
🚨総戸数20戸以下なのに高層(7階以上)。修繕費の構造的な不利が大きい
🚨修繕積立金が月5,000円以下で新築ではない。積立不足の可能性が極めて高い
🚨長期修繕計画が作成されていない・古い。5年以上更新されていないも要注意
🚨修繕積立金の滞納がある世帯が多い。重要事項説明書で確認できる
🚨大規模修繕の実施が大幅に遅れている。予定時期より5年以上遅れているケース
🚨管理組合の議事録を見せてもらえない。それ自体が問題の隠蔽を疑うべきサイン
🚨投資用物件の割合が高そう(賃貸に出ている部屋が多い)。管理への無関心層が多くなりやすい
💡 重要事項説明書は「熟読必須」の書類

マンション購入前に宅建士から交付される重要事項説明書には、管理費・修繕積立金の額、積立総額、滞納状況などが記載されています。サラッと聞き流すだけじゃなく、修繕積立金の項目をしっかり読んで、不明点はその場で必ず聞いてください。それが買い手の権利です。

まとめ:総戸数は「地味だけど最重要」な指標

間取りも立地も大事。でも、マンションという「共有財産」を長く良い状態で保つためには、修繕の仕組みが機能しているかどうかが大前提です。

🏠 この記事のまとめ
  • 総戸数が少ないほど、修繕積立金の1戸あたり負担が重くなりやすい
  • 修繕費は「縦(高さ)」に比例するため、同じ高さなら総戸数が多いマンションのほうが有利
  • 修繕積立金の滞納・管理丸投げが1戸でも起きると、小規模マンションは致命的なダメージを受けやすい
  • 国土交通省ガイドラインの㎡単価(200〜340円台)を目安に、修繕積立金の適正額を自分でチェックできる
  • 新築時に安い「段階増額積立方式」は将来の大幅値上げリスクを含む。必ず将来のスケジュールを確認する
  • 買っていいマンションかどうかは、長期修繕計画・積立残高・修繕履歴の3点セットで判断する

マンションは「買えば終わり」ではなく、「買ってからが本番」です。何十年も住み続ける場所だからこそ、修繕積立金という目に見えにくいお金の流れをちゃんと理解したうえで購入の判断をしてほしいと思います。

宅建士として、FP1級として、そして不動産の現場を歩いてきた者として言います。「安さ」だけで決めると、10年後に後悔する。この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。

🏡 最後に一つ、大事なことをお伝えします。

マンション購入は、自分が「住む」だけじゃなく、「資産を持つ」という行為でもあります。修繕積立金の仕組みを知らずに買ってしまうと、数年後に毎月の負担が倍になったり、売りたくても売れない物件を抱えることになりかねません。

不動産で失敗しないために必要なのは、結局「知識」だけです。私自身20年以上前にこのスクールで学び、以来13件の不動産取引でただの一度も損をしていません。スクールの受講料は確かに安くはありませんが、不動産で100万・200万損するリスクと比べたら、安い保険だと思っています。

⚠️ 免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・財務的アドバイスを提供するものではありません。マンション購入にあたっては、個々の物件の状況が異なりますので、具体的な判断は必ず宅建士・マンション管理士・FPなどの専門家にご相談ください。記事内の数値・データは出典に基づくものですが、最新情報は各公的機関の発表をご確認ください。
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✍️ この記事を書いた人|ほげたろう 宅建士 / FP1級
宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)保有。今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代や不動産投資の失敗も含めたリアルな体験と、日々データと格闘するエンジニア目線の両方から「不動産ゼロからナビ」を運営。4人家族、地方在住。「難しそう」を「なんとかなる」に変える情報を発信中。
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