ある日突然、大家さんや管理会社から「立ち退いてください」と言われたら――。

頭が真っ白になりますよね。「次の家はどうする?」「引っ越し費用は誰が払う?」「子どもの保育園は?」と、不安が一気に押し寄せてくる。

でも、安心してください。立ち退きは、正しく対応すれば”損をしない”どころか、むしろプラスになる可能性があります。

私は宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)を持ち、不動産系サービス会社に勤務しながら、飛び込み営業時代に数多くの立ち退き交渉の現場を見てきました。このブログでは、そのリアルな経験をもとに「知らないと損をする」情報をお届けしています。

この記事を読めば、立ち退きを求められたときに何をすべきか・何を請求できるか・どう交渉すればいいかが、ひと通りわかります。感情に飲み込まれず、落ち着いて対応するための「地図」として使ってください。

友人宅に届いた、契約解除通知書の実際の写真…いきなりきたら怖いですよね

立ち退きを求められた――まず「正当事由」を確認しよう

賃貸契約は、基本的に入居者が守られる仕組みになっています。大家さんが「出て行ってください」と言っても、入居者は簡単に追い出されません。

その根拠となるのが、借地借家法(しゃくちしゃっかほう)という法律です。この法律では、大家側が契約の更新を拒絶したり、解約を申し入れたりするためには「正当事由(せいとうじゆう)」が必要と定められています(借地借家法第28条)。

正当事由になるもの・ならないもの

正当事由があるかどうかは、「大家の必要性」と「借主の不利益」を天秤にかけて判断されます。

✅ 正当事由になりやすいケース ❌ 正当事由にならないケース
建物の老朽化・取り壊し・建て替え 「もっと高い家賃の人に貸したい」
大家自身や家族が住む必要がある 「入居者と仲が悪くなった」
建物の重大な損壊で危険な状態 「売却したいから」(それだけでは弱い)

重要なのは、正当事由があるからといって、即座に退去しなければならないわけではないということです。正当事由はあくまで「交渉のテーブルに乗る条件」。実際に退去するかどうか、その条件(立ち退き料など)は交渉によって決まります。

まず「なぜ立ち退きを求められているのか」を書面で確認することが、第一歩です。

立ち退き料って何?いくらもらえる?

立ち退き料は、法律で金額が決まっているものではありません。ただし、「払うかどうか」「いくら払うか」は交渉によって大きく変わります。

「言わなければもらえなかった」というケースは、実際にあります。私の知人も北千住のアパートで突然立ち退きを求められましたが、最初は立ち退き料の話が一切なく「期日までに退去してください」の一言だけでした。彼女が自分から「立ち退き料はどうなりますか?」と聞いた結果、最終的に40万円+敷金全額返還という形になりました。

立ち退き料の相場:何が含まれる?

立ち退き料の目安として、以下のような費用が含まれることが多いです。

  • 🏠 引っ越し費用(実費)
  • 🔑 新居の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料など)
  • 💴 家賃差額の補填(今より高い家賃になる場合、数か月分)
  • 😞 迷惑料(生活が乱れることへの補償)
  • 🏪 営業損失(店舗・事務所の場合は売上損失も対象になることがある)

金額の目安としては、居住用の賃貸で家賃の6か月〜24か月分相当になるケースが多いと言われています。ただしこれはあくまで目安であり、物件の状況・立地・残存契約期間・大家の事情によって大きく変わります。

「40万円は少なすぎるのでは」と思われた方、鋭いです。もっと取れた可能性はあります。ただ、知識がない状態で交渉するのと、相場を知った上で交渉するのでは、結果が大きく違います。だからこそ、この記事を読んでいただいていることには意味があります。

実際の交渉、どう進めればいい?

交渉で一番大事なのは、感情的にならないことです。

「なんで私が出て行かなきゃいけないの!」という気持ちは、当然です。でも、感情をぶつけると相手も身構えます。交渉の場では「冷静・淡々・根拠あり」が最強のスタンスです。

交渉の流れ:ステップごとに整理

STEP 1
書面で通知をもらう
口頭だけの話は証拠になりません。「退去理由・退去期限・立ち退き料の有無」を書面で確認しましょう。
STEP 2
引っ越しにかかる費用を試算する
引っ越し代・新居の敷金礼金・仲介手数料・家賃差額など、「実際にいくかかるか」を数字にしてみましょう。この数字が交渉の根拠になります。
STEP 3
立ち退き料を請求する
「立ち退き料はいくらいただけますか?」とこちらから切り出しましょう。相手が提示してくる金額をそのまま受け入れる必要はありません。
STEP 4
納得できなければ専門家に相談する
弁護士・司法書士・宅建士に相談することも選択肢です。法テラス(国の法的支援機関)では無料相談が可能です。

交渉で「言ってはいけないこと」「言うべきこと」

交渉で感情的な言葉(「こんなのひどい!」「絶対出ていかない!」)を使うと、話し合いが長引きます。代わりに、以下のような言葉を使いましょう。

「退去については理解しています。ただ、引っ越しには費用がかかります。実費をまとめたので、こちらをもとに立ち退き料について話し合いをさせていただけますか」

冷静で根拠のある交渉は、相手にとっても「きちんと話せる入居者だ」という印象を与えます。

更新料は払わないといけないの?

「どうせ出て行くのに、更新料を払うのはおかしくない?」――これはよく聞かれる疑問です。

原則として、更新料は支払う必要があります。更新料は「更新という契約行為」に対する対価であり、立ち退き予定と直接リンクするものではないからです。

ただし、交渉の余地が全くないとも言い切れません。法律と現実は別の話で、大家さんが「更新料を減額する」または「立ち退き料に上乗せする」という形で合意するケースもあります。

ここでも大事なのは「言わないと何も変わらない」という原則です。更新料の交渉もしてみる価値はあります。

立ち退き=ピンチじゃない。むしろ”チャンス”と考えよう

少し視点を変えてみましょう。

通常、自分の都合で引っ越す場合、引っ越し費用・敷金礼金・仲介手数料など、合わせると50万〜100万円以上かかることもありますよね。それを全部自腹で払う。

でも立ち退きの場合は?

交渉次第で、その費用を相手に負担してもらえます。しかも、迷惑料という名目の「上乗せ分」まで請求できる可能性がある。

もし今の家に少しでも不満があったなら――「駅から遠い」「収納が少ない」「部屋が手狭になってきた」――それを改善できる引っ越しを、相手の費用でできるかもしれません。

もちろん手続きは面倒です。物件探しも大変です。でも冷静に見れば、「損をする話ではない」のです。

これは「強がり」ではなく、実際の交渉の現場を見てきた私の正直な感想です。知識があれば、立ち退きは怖くない。

まとめ:突然立ち退きを言われたらやること5つ

最後に、やるべきことを整理します。難しいことはひとつもありません。

📄
① 契約書を確認する
契約期間・解約条件・特約事項などをチェック。
📬
② 書面で通知をもらう
口頭だけで動かない。理由・期限・条件を書面で確認する。
🧮
③ 引っ越し費用を試算する
引っ越し代・敷金礼金・仲介手数料・家賃差額をリストアップ。
💬
④ 立ち退き料をこちらから聞く
「立ち退き料はどうなりますか?」と堂々と聞いてOK。
🤝
⑤ 納得できなければ専門家に相談する
法テラスや弁護士・宅建士への相談も選択肢のひとつ。

一番大事なのは、何も言わずにそのまま受け入れないこと。立ち退き料は「わがまま」ではなく、あなたの正当な権利です。あなたの生活が動くのです。その負担を補償してもらうのは当然のことです。

知識があれば、感情に飲み込まれず、落ち着いて対応できます。一つずつ進めていきましょう。

📎 参考・出典

✍️ この記事を書いた人|ほげたろう

宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)保有のフルスタックエンジニア。不動産系サービス会社に勤務しながら、飛び込み営業時代や不動産投資の失敗も含めたリアルな体験をもとに「不動産ゼロからナビ」を運営。4人家族、地方在住。「難しそう」を「なんとかなる」に変える情報を発信中。

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