リースバックはやめたほうがいい|得をするのは業者だけ、という仕組みを数字で解説
「実家がリースバック契約していたことを、最近知りました。家賃も、母の特養(とくよう|特別養護老人ホーム)のホーム代も高くて、今後が心配です。何かできる対策はありますか?」——SNSでこんな相談を見かけました。同じように、親や自分がリースバックを契約してしまった人、業者にすすめられている人は、けっこう多いんじゃないかと思います。
結論から言います。リースバックは、多くの人にとって「やらなくていい」選択です。仕組み上、得をするのは基本的に業者側だからです。
私は宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)を持ち、今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発しています。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代に現場で見てきたことと、日々データと向き合うエンジニア目線、その両方からこの記事を書きました。
この記事を読めば、「なぜ業者ばかりが得をするのか」を数字で理解できます。契約前なら回避でき、もう契約してしまった人でも、今からできる打ち手が見えてきます。
そもそもリースバックって何?仕組みをサクッと
ひとことで言うと、「自宅を業者に売って現金を受け取り、その後は家賃を払って同じ家に住み続ける」という仕組みです。
国土交通省も、リースバックを「住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むサービス」と定義しています。流れにすると、こんな感じです。
「売っても住み続けられる」「まとまったお金が手に入る」「将来は買い戻せる」——広告ではこの3点が魅力として語られます。間違いではありません。ただ、その魅力の裏側で、お金がどう動いているかを見ると、印象はかなり変わります。
得をするのは業者だけ。利益が出る「三段構え」
業者は ①安く買う → ②高い家賃を取る → ③高く買い戻させる の三段構えで利益を出します。利用者から見ると、この3つすべてが「不利な方向」に効きます。
なぜそう言えるのか。リースバックは「売却」と「賃貸」がセットになった取引です。普通の売買や賃貸と決定的に違うのは、売り手(あなた)が「その家にどうしても住み続けたい」という弱い立場で交渉していること。条件が業者側に有利になりやすいのは、構造上ある意味当然なんです。具体的に3段に分けて見ていきます。
① 売却価格は、市場価格の6〜8割(=安く買われる)
リースバックの買取価格は、一般に市場価格の60〜80%程度が相場とされています(市場価格に0.7〜0.8を掛けるイメージ)。仲介で普通に売れば3,000万円の家でも、リースバックだと2,000万円台前半、ということが起こります。
理由は、業者が「賃貸期間が終わったあとに、リフォームして再販する」ことまで見込んで価格を決めているから。値下がりリスクや工事費を、あらかじめ買取価格から差し引いているわけです。
② 家賃は「相場」ではなく「売値 × 利回り」で決まる(=割高になる)
ここが一番の落とし穴です。リースバックの家賃は、周辺の賃貸相場ではなく、「業者が支払った売却価格 × 期待利回り」で計算されるのが一般的。期待利回りは年8%前後(物件により8〜13%程度)が目安です。
たとえば業者が2,000万円で買い、利回り8%を求めると、年間の家賃は2,000万円×8%=160万円。月にすると約13万円です。周辺の似た物件が月8〜9万円で借りられたとしても、関係なく決まってしまう。だから「割高な家賃を払い続ける」状態になりやすいんです。
③ 買い戻し価格は、売値の1.1〜1.3倍(=高く売り返される)
「将来買い戻せる」も、よく見ると業者の利益になっています。買い戻し価格の相場は、売却価格の110〜130%程度。売買にかかった経費と業者の利益が上乗せされるためです。
2,000万円で売った家を、後日2,200万〜2,600万円で買い戻す——しかも、それまでの家賃を払い続けたうえで、です。「気が変わったら元に戻せる」という安心感の値段は、思った以上に高くつきます。
3,000万円の家がどうなる?数字でシミュレーション
言葉だけだとピンと来ないので、市場価格3,000万円のマンションをモデルケースに、お金の流れを「あなた側」と「業者側」で並べてみます。前提を置いた試算なので実際の数字は物件ごとに変わりますが、構造はよく見えるはずです。
モデルケースの前提
市場価格 3,000万円/買取価格=市価の70%=2,100万円/家賃=売値×利回り8〜10%÷12=月14〜17.5万円/買戻し価格=売値の115%=約2,415万円
| 項目 | あなた(売る側) | 業者(買う側) |
|---|---|---|
| 最初のお金 | 2,100万円を受け取る (市価より約900万円少ない) |
3,000万円の家を2,100万円で取得 (時点で約900万円分お得) |
| 毎月のお金 | 家賃 月14〜17.5万円を払う (年168〜210万円) |
家賃を受け取る (投下した2,100万円を約10〜12年で回収) |
| 買い戻すなら | 約2,415万円が必要 (受け取った額より約315万円多い) |
2,415万円が入る (差益+それまでの家賃) |
| 買い戻さない/ 住み続けられないと |
家は完全に他人のもの。契約期間が切れれば退去を求められることも | 市場価格で再販できる (リフォームして付加価値をつけて販売) |
整理すると、業者は「①買った瞬間に約900万円分のお得」+「②家賃で毎年8〜10%を回収」+「③買い戻し or 再販でさらに利益」という流れになります。一方のあなたは、現金は手に入るものの、その後ずっと割高な家賃を払い、買い戻すにも当初より高いお金が要る。長く住むほど不利になるのが、この仕組みの本質です。
SNSの相談にあった「家賃も高く、母の特養代も高い」という状況は、まさにこの「割高な家賃が家計を圧迫する」段階に入ってしまった例だと言えます。
国も警鐘を鳴らしている|相談者の7割が70歳以上
「それはあなたの意見でしょ」と思われるかもしれません。でも、リースバックの問題は公的機関がはっきり注意喚起しているテーマです。私の主観ではなく、データで確認できます。
国民生活センターは2025年5月、「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」という注意喚起を公表しました。そこで示されているのが、次の事実です。
リースバック契約に関する相談のうち
約7割 が 70歳以上からの相談。相談件数は近年増加傾向。
そして、寄せられた相談から見える問題点として、こんな点が挙げられています。
- ⚠️長時間の勧誘や強引な勧誘で、望まない契約をしてしまっている
- ⚠️契約内容について、消費者に適切な説明がされていない
- ⚠️「ずっと住み続けられる」という思い込みと、実際の契約内容が食い違っている
- ⚠️判断能力が低下した高齢者がトラブルに巻き込まれている
さかのぼれば国土交通省も2022年に、消費者向けの「住宅のリースバックに関するガイドブック」を公表しています。国が「消費者向けの注意ガイドを作らないといけない」と判断するほど、トラブルが起きている取引——という事実は、知っておいて損はありません。
それでも”アリ”な、数少ないケース
公平に言うと、リースバックが「ゼロか百か」で全部ダメ、というわけではありません。例外的に検討の余地があるのは、ごく限られた状況だけです。
- 1数年以内に確実に引っ越す前提のとき。子の独立や施設入居の時期が決まっていて、「それまでの数年だけ住めればいい」なら、割高な家賃の期間が短く済みます。
- 2住宅ローンの返済が滞り、競売が目前といった、ほかに現金化の手段がない最終局面。競売よりは条件が整理しやすい場合があります。
逆に言えば、「これからもずっとその家に住みたい」人にとっては、ほぼ向きません。長く住むほど家賃の総額がふくらみ、買い戻しのハードルも上がっていくからです。「住み続けたいからリースバックを選ぶ」のは、目的と手段がちぐはぐになりやすい——ここは押さえておいてください。
「家計が苦しい」なら、その前に試すべきこと
「まとまったお金が要る」「毎月の支払いがきつい」——そういう動機でリースバックを検討しているなら、先に試すべき選択肢がいくつもあります。
① 住宅ローンが残っているなら、まず「借り換え」で月々を下げられないか
住宅ローンを返済中で、家計が苦しいだけなら、借り換えで月々の返済額を下げるほうが先です。リースバックのように家を手放さずに済みますし、金利が当時より下がっていれば、毎月の負担がそれなりに軽くなることもあります。
家を買うとき、物件はあれこれ時間をかけて選ぶのに、住宅ローンの借り先は「なんとなく」で決めてしまった人が意外と多いです。でも、どの銀行で借りるかが変わるだけで、総返済額が数百万円単位で変わることもあります。
「モゲチェック」は、入力5分・完全無料で、ネット銀行から地方銀行まで主要な金融機関の条件をまとめて比較・診断できるサービスです。気になることは住宅ローンのプロにメッセージで相談もできます。まずは「自分が今、どの銀行からどんな条件で借り換えられそうか」を見てみるだけでもOK。家を手放す決断をする前に、ローン側でできることがないか確認してみてください。(※年収や雇用形態によっては提案が難しい場合もあり、全員に最適な条件が出るとは限りません)
② 普通に「仲介」で売って、安い賃貸に住み替える
家を手放してもいいなら、リースバックではなく通常の仲介売却が基本です。売却価格は市場価格に近づきますし(リースバックの6〜8割ではなく)、その現金で引っ越し先の安い賃貸を借りれば、家賃も周辺相場どおり。「割高な家賃を払い続ける」状態を避けられます。
③ リバースモーゲージなど、ほかの手段と必ず比べる
高齢で自宅を担保にお金を借りたいなら、リバースモーゲージ(自宅を担保にした借入)など別の制度もあります。どれが合うかは状況しだいなので、リースバック1社の話だけで決めず、必ず複数の手段・複数の事業者を比較してください。国民生活センターも「複数の事業者から情報収集し、自分のライフプランに合った条件を比較・検討する」よう呼びかけています。
もう契約してしまった人へ|今からできる打ち手
正直なところ、契約してしまった後にできることは多くありません。損をさせられた「後」だからです。それでも、放置するより打てる手はあります。順番に整理します。
- 1まず契約書を引っ張り出して、3点を確認する。「買戻し特約はあるか」「家賃の改定条項(値上げのルール)はどうなっているか」「契約期間と更新条件はどうか」。ここを整理するのが第一歩です。とくに賃貸借契約が”定期借家”だと、期間満了で退去を求められる可能性があるので要注意。
- 2家計を圧迫しているなら、3つの選択肢を冷静に比較する。「家賃の減額交渉」「買い戻し」「転居(より安い賃貸へ)」のどれが現実的か。感情ではなく、数字で並べて比べます。
- 3その家を維持し続ける必要が本当にあるか、根本から考え直す。たとえば親が特養に入っているなら、空き家を割高な家賃で維持し続ける意味は薄いかもしれません。「住み続ける」前提を一度外すと、選択肢が広がります。
そして、ここが一番大事です。個別の契約内容によって打てる手はガラッと変わります。一人で抱えず、契約書を見てもらいながら相談してください。
- 📞消費者ホットライン「188(いやや!)」。最寄りの消費生活センターにつながる全国共通の3桁番号です。
- ⚖️弁護士・司法書士への相談。契約書を見てもらいながら相談するのが、結局いちばん早いです。
まとめ|リースバックは「最後の手段」
もう一度、結論です。リースバックは、多くの人にとってやらなくていい選択です。得をするのは基本的に業者側で、「安く買う・高い家賃・高く買い戻させる」の三段構えで利益が出る仕組みだから。とくに「これからもずっと住みたい」人には向きません。
- ✅売却価格は市場価格の6〜8割になりやすい
- ✅家賃は相場ではなく「売値×利回り」で決まり、割高になりやすい
- ✅買い戻しは売値の1.1〜1.3倍。長く住むほど不利
- ✅国民生活センターの相談者の約7割が70歳以上。強引な勧誘トラブルが増加中
- ✅家計が苦しいだけなら、借り換え・通常売却・他制度を先に比較
こうして並べてみると、リースバックで損をする人の多くは、「リースバックが特別おかしい」というより、仕組みや相場を知らないまま、急かされて契約してしまっていることがわかります。逆に言えば、知識さえあれば防げる損です。
リースバックの話を突き詰めると、結局は「自宅も、れっきとした不動産投資だ」という一点に行き着きます。買うときに高く買ってしまえば、その後どう工夫しても取り返せない。リースバックで割高な家賃を払い続ける人も、出発点は「自宅の値段や仕組みを、投資として見ていなかった」ことだったりします。
私自身、20年以上前にファイナンシャルアカデミーの不動産投資スクールを受講しました。そこで学んだ「物件を数字で見る目」のおかげで、これまでの不動産取引(自宅購入2件を含む計13件)で、損を出さずにこられたと思っています。受講料は安くはありませんが、不動産で一度判断を誤ったときの損失と比べれば、はるかに小さい金額です。
気になる方は、まず無料体験を受けてみてください。無料・勧誘なし・話を聞くだけでOK。不動産は気軽に買うものではありませんが、この体験受講のほうは、気軽に受けてみてください。
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「実家がリースバックを契約していた」と知って不安になっている方も、まだ間に合うことはあります。まずは契約書を確認し、一人で抱えず188や専門家に相談してみてください。
- ・国民生活センター|強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!(2025年5月21日公表)
- ・国土交通省|住宅のリースバックに関するガイドブック(2022年公表)
- ・国土交通省|「住宅のリースバックに関するガイドブック」を公表しました(報道発表)
※ 売却価格(市場価格の6〜8割)・家賃(売値×利回り8〜13%)・買戻し価格(売値の1.1〜1.3倍)の各相場は、複数の不動産事業者が公表する一般的な相場観をもとにした目安です。実際の条件は物件・事業者により異なります。本記事のシミュレーションは前提を置いた試算であり、特定の取引結果を保証するものではありません。
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的・税務・投資に関するアドバイスではありません。契約の判断にあたっては、契約書の内容を確認のうえ、消費生活センター(188)や弁護士などの専門家にご相談ください。
宅建士(2014年取得)・FP1級(2019年取得)保有。今は不動産テック企業でAIを使った不動産価格の査定システムを開発。「家を売るとき・買うときの情報格差をなくす」がミッション。飛び込み営業時代や不動産投資の失敗も含めたリアルな体験と、日々データと格闘するエンジニア目線の両方から「不動産ゼロからナビ」を運営。4人家族、地方在住。「難しそう」を「なんとかなる」に変える情報を発信中。